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癒しの歴史人類学

癒しの歴史人類学

鈴木七美著
世界思想社/2002.3
1,995円

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「癒し」の本格的歴史書はこれまで待望されていたが存在しなかった。癒しの現代的考察なる書物はあまた出ていて、それぞれの見解があってそれはそれで存在意義があるのだろうが、正直言って、賞味期限月の加工食品のようで、醸造発酵食品のような年月に耐え、うまみを増すような書物は少なかった。本書は「癒し」(HEALING/CURE/MEDICINE)の語源にさかのぼるとことから始まり、ヒポクラテス、ガレノス、「アリストテレスのマスターピース」、人相学、骨相学、ホメオパシー、アメリカのハーブ興隆運動であるトムソニアニズム、モーリス・メッセゲの薬草療法などを鳥瞰する論述は、本格的でありかつ、日本では未開の地に踏み込む研究で実に興味深い。

 代替医療が日本で市民権を得ているかどうかは容易に判断することができないが、すくなくとも、この言葉が最近脚光を浴びていることだけは確かだろう。しかし、この風潮には二つの欠落がある。ひとつは、歴史的考察と哲学的な考察である。これまで「癒し」と「医」の歴史がどのような道筋をたどってきたか、それを安易に西洋近代医療を頂点に据えることなく認識すること。この当たり前なことが今までなぜか閑却されていた。

 いま、なぜ代替医療なのかという問題を考えるとき、その歴史的必然性を踏まえることのない論議はあまり意味がない。代替医療に「古きに帰れ」というメッセージしかききとれないとしたら現代の混迷深き「健康」の混沌に一条の光をもたらすことは難しいだろう。われわれが試みるべきは、「古きに新しき」なにものかを見出すことなのである。

 将来を先取りしようとして人類は、一体幾つのあやまりを冒してきただろう。歴史は、今を生きた者の軌跡にほかならない。人類は進歩しているという考えは、現代人の妄想かもしれないではないか。今日のわれわれが、古いと一笑に伏す中世の健康観が、数百年前には進歩思想の最先端だったことを忘れてはならない。遺伝子さえも解読できると豪語する現代科学もいずれかは、「古い」と烙印を捺されることは避けられまい。新しいという言葉に新規性しか感じ取れないとしたら、こう言い換えてもいい。真実もしくは、真実に導く事実は、その現われ出でる時代に左右されず、いつも新しく腐敗することがない。

 著者は、あとがきにこう書いている。「多様な要素が生み出され融合したハーブと水の地へは、今後も霊感を感じる度、飛んでいきたいと思います。」

 巫女の言葉には耳を傾けるべし。

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