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驚異の触手療法〜筋肉疲労が病気の原因だった 福増一切照著 |
作家の水上勉が心不全で倒れたとき、手術せずに助かったのはこの人の施術のおかげ、と言われている福増一切照(さいしょう=出家名)氏が提唱、実践した「筋肉は第二の心臓、第二の感覚器官」論に基づく触手療法について、現在入手しうる唯一の本である。97年の初版でおよそ新刊とは呼べないが、著者が故人となってしまった今、この本の重要性は再認識されるべきと考え、あえてとりあげさせてもらった。
著者は、京大医学部卒で心臓血管の専門医として各地で勤務後、欧米で人工臓器の専門医として活躍。当時の動物人工心臓の世界最長記録を樹立した。帰国後、89年に西洋医学の解剖学的知見に東洋医学(経絡と野口晴哉の全生療法)を重ねた「触手療法」としてまとめ、実践の場として日本全国5箇所に道場を開いて治療に当たっていたが、数年前に亡くなった。1日に10人を超す患者に施術したためと囁かれている。
筋肉疲労とこころの持ち方については『サーノ博士のバックペイン・ヒーリング』や『腰痛は怒りだ』(ともに春秋社刊)で、慢性的筋肉疲労と自己防御システムの悪循環による自律神経失調の心身相関仮説とそれに基づく方法が実証され、腰椎変成など器質性変異に偏重しがちな従来の西洋医学判断に対する有効な方法として注目され出していた。
恒常的ストレスが慢性的筋肉疲労を引き起こし、リンパや静脈の循環を疎害し、免疫力を低下させ、肩こりや腰痛だけでなくひいてはがんにまでつながっていると説く。心身相関の接点を静脈とリンパの還流とそこに関わる骨格筋の多層なネットワークとし、この筋肉ネットワークこそ経絡思想の原点となったと考えられる『黄帝内経』にある経筋のことではと類推し、それに伴うからだの使い方が体癖になるのではと推論する。
本書はタイトルのとおり、一般向けに書かれた実用書なので、精緻に検証されたものかどうかはわからないが、卓越した統合的視点であることは間違いない。手技の方法については、マッサージや揉むのとは異なり、刺激域の閾値寸前まで筋繊維や筋繊維束を圧迫し、筋肉−腱−靭帯−骨膜を緩めるというもので、詳しくないが、むしろオステオパシー、ロルフィングなどに近いのではないかと思う。
著者の死後、技術だけが流出している様子があり、惜しまれる。(有岡 眞)
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