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未来免疫学 あなたは「顆粒球人間」か「リンパ球人間」か 安保徹著 |
「人はなぜ治るか」から「人はどのようにして治るのか」。「治癒の仕組みを治癒系として問う必要があるのではないか」。免疫系、内分泌系、神経系の相関を体系的視点で捉え返そう、と当会副代表の上野圭一さんから聞かされたのは、上野さんの『聖なる自然治癒力』(浩気社刊)をまとめるお手伝いをさせてもらってからしばらくした頃だったと思う。
言うまでもなく代替医療の多くは自然治癒力に基づいて語られる。自然治癒力は、世界内存在である人間を考える宇宙観から生命観、身体観、病気や健康観まで包摂した深い考えであることは繰り返すまでもない。ただ、誰にも納得されやすい言葉だけに安易に使われることが多いのも事実で、そうした傾向を厳密な科学であることを至上とする主流医学から代替医療を非難する口実に使われてきた。そうした流れのなかで、日本ホリスティック医学協会などを中心に自然治癒力を問い直す動きが出てきているらしい。上記の上野さんの発言の背景はそうした状況を先取りしたものだと私は考えていた。
そうこうしているところへ、本書の著者安保徹新潟大教授の「免疫学」の話に出会った。
何とも面白い本である。わかりやすさと知的興奮、好奇心をこういう形でまとめてくれた一般向け医学書はそう多くはない。
話は「晴れた日に虫垂炎が多いのはなぜ」に始まり、気圧と酸素、長寿と短命、飽食と時代、空腹とセックス、飲酒と麻酔、免疫の日内リズム、月と太陽、男と女、喜怒哀楽と生体反応、がんと自己免疫疾患まで、生物物理、生化学のテーマを、生体防御の進化に対応してできたリンパ球と顆粒球とそれを支配する交感神経、副交感神経の関係を基軸に展開される。
言い換えれば、免疫と自律神経を視点に据えて世界を再編して見直したものと言うこともできる。
中医学の相補相克や虚実・陰陽、腸内造血を唱えた千島学説、進化と体制を説いた三木発生学、気圧や気候と健康の相関に触れた温泉気候学、個体発生における進化を明らかにした胎児学、時間医学、前号でご紹介した筋肉内疲労と骨格筋などと重ね併せて読むと面白さは倍増する。読み手の関心に合わせて読み解けるわけだ。『未来免疫学』のタイトルは、古い細胞に目を向けることで生まれた温故知新の免疫学の意で、随所に生命40憶年の進化、発生学や胎生学が説かれているのだが、じつにわかりやすい。進化したシステムを持つB細胞、T細胞などのリンパ球を研究対象とする免疫学、未分化な顆粒球を対象とする血液学という専門分化した学の溝を埋め免疫系として統合したばかりか、自律神経系や内分泌系にものびた仮説検証の触手をのばし、その成果を公表したのが本書である。
治癒系の見取り図が見えてきた。
著者には話題作『免疫革命』をはじめ、『奇跡が起こる爪もみ療法』『免疫学問答』『絵でわかる免疫』『ガンは自分で治せる』『医療が病をつくる』など多数あり、わかりやすさと実用にも心を配っているのがわかる。
すべてに目を通したわけではないが、97年に発刊された本書は著者の著作活動の出発点にあるのと、講演会での話の面白さを再現してあまりあるようなので選ばせてもらったのだが、期待を大きく上回るものだった。
帯の惹句「21世紀の免疫学は限りなく日常的なのだ」もいいが、仮説をたてて、立証していく科学的姿勢、医学はこんなに面白いことを知らせてくれる点もいい、何よりも著者の人柄がいいのだが……。(有岡)
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