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治る力を呼びさます 統合医療のすすめ

治る力を呼びさます 統合医療のすすめ

山本竜隆著
東京堂出版 04.03
1,995円(税込)

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「よき友三つあり。一つには物くるる友、二つには医師(くすし)、三つには智恵ある友」と徒然草にある。山本氏からは、モノをもらったことはないが、この「モノ」が本居宣長のいう日本人の霊性の根源である「物のあわれ」のそれだとしたら、私にとって著者は、兼好法師の言う意味で、まったくよき友であるということになる。

 小説家が、自分で書いた小説よりも、自らの魂は偉大なのだといえば、未熟な小説のいいわけになるだけだが、本書は違う。統合医療というひとつの医療の姿を正確にかつ広範囲に、わかりやすくまとめた本書の読後、まず感じたのは、著者のこころにある思想はさらに深いということだった。

 誤解のなきように書いておくなら、本書はまったく良書である。バランスのとれた、人間の身心霊への畏敬と、出来事としての治癒の仲立ちとしての「治療」と「医療」の歴史と現在の必然を端的にまとめてある。しかし、一方で、本書にもしばしば登場する統合医療ビレッジの創設に伴い、昼夜を問わず著者と論議をしたのを思い出しながら、時が熟せば著者のこころは、さらに真実に肉薄することばを語り始めるだろうという期待を感じざるを得なかった。

「数千年の間、庶民の支持を得てきた癒しの文化−そこには『病』は法則性の乱れだと捉える共通認識とその乱れを毒素排泄や代謝促進などによって本来の状態に戻すこと、すなわち体内のホメオスタシス・治癒系を高めることが、本来の治療行為であったことが伺えます。私たちが学ぶべき点は、まさにこのような基本認識であり、治療態度ではないでしょうか。」(本書163ページ)

 治癒は、ひとつの出来事である。患者と医師との間に起こるひとつの出来事である。治療は、治癒を促し、治癒は病に苦しむものを癒す。治療そのものが、直接的に患者を癒すことはない。こういっても、きっと著者は否定しないと思う。もしも、治療が病を癒すというのであれば、医師は患者に対しては「神々しい」存在になるだろう。しかし、治癒という出来事が癒しの扉を開くのであれば、医師は、その扉の門番ということになる。少なくても、門番たる医師が神の台座に座るなどということは起こるまい。

「風は思いのままに吹く」。聖書のヨハネ福音書にある言葉だ。風を治癒に置き換えてみるといい。「治癒は思いのままに働く」——本書はそんなメッセージを具体的にかつ、歴史的に、実践を踏まえて書かれたということが稀有なのである。

 本書でもっとも将来を期待させる記述は、著者のプロフィールにある。「2003年慶応義塾大学文学部(通信教育課程)第一類(哲学科)入学、在学中」。医師が哲学を学び始めたのである。ここに込められている胎動を見逃してはならない。イスラム医学の祖であるイブン・シーナは、文字通りの大哲学者だった。パラケルスス、ユング、シュタイナー、みな思想家にして、医師だった。数十年後、われわれは、アンドルー・ワイルをこの系譜に連ねるだろう。これと本質を同じくすることが、今、日本で始まったのである。

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