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ミッション・オブ・ラブ 終末期のスピリチュアル・ケア ロジャー・コール著/上野圭一監訳・小池美和訳 |
ソウル・コンシャスに生きるために
〜『ミッション・オブ・ラブ』を翻訳して
小池 美和(翻訳家)
全豪でベストセラーとなった本書『ミッション・オブ・ラブ〜終末期のスピリチュアル・ケア』は、緩和ケア医師として終末期にある多くの患者から学び、またエリザベス・キューブラー・ロス博士(『死ぬ瞬間』『人生は廻る輪のように』などの著者)のワークショップやラージャ・ヨーガの実践から、たましいの実在に気づいたロジャー・コール医師の、いわばたましいの旅路の記録である。緩和ケアにおけるスピリチュアル・ケアの確立に至った過程を、自身の臨床経験を紹介しながらヒューマニスティックに語っている。
緩和ケアにおけるスピリチュアル・ケアの必要性については、WHO(世界保健機関)の緩和ケアの定義にも次のように明記されている。
「治癒を目的とした治療に反応しなくなった患者にたいする積極的で全人的なケアであり、痛みやほかの症状のコントロール、精神的・社会的・霊的な問題のケアを優先する。目標は患者と家族のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を高めること」
コール医師が霊的な問題について患者に語るようになってからというもの、霊性の自覚、未来への希望、愛にたいする信頼が患者にもたらされたという。本書巻末で上野圭一さんは、『"Spiritual well-being"とはなにか』と題してこう語られている。
"Spiritual well-being"でない「健康」は、「生命のぬけがら」といってもいいかもしれない——。
たとえからだが回復不可能な状態にあったとしても、"Spiritual well-being"であるならば、霊性を自覚し、未来への希望をもつことができる。蝶が孵化して飛び立つように、われわれもからだを脱ぎ捨てて次の次元へ旅立つ。そう一瞬でも実感することができたならば、生きることが非常に楽になるのではないだろうか。それはまた、死に赴く人たちが遺していきたいメッセージではないかと思う。
本書で語られる「死」は、多くの希望を与えてくれる。「死」は「生」を、「病」は「いのちの力」を教えてくれるからだ。病を得て死と対峙したとき、人は人生に目覚め、たましいの旅路を歩きはじめる。死を覚悟してすべてを手放したときに見えてくる光に向かって歩きはじめる——。
患者からそれを学んだコール医師は、生命にかかわる病を得ずともソウル・コンシャス(意識とたましいの同一化)に生きる術はないかと模索した。そして出会ったのがラージャ・ヨーガ瞑想だったのである。
ソウル・コンシャスに生きるとは、モノやコト、表面的な部分にとらわれるのではなく、霊性への気づきと矜持にもとづいて生きること。"宇宙船地球号"の乗客のひとりとして、平和を祈りながら生きること。ほんとうに必要なものはすべて自分の内側にある、そうわかっていれば本来の自己を実現し、こころをひらいて正直に生きることができるのだと本書は教えてくれる。
幼いころ、われわれは生きているだけで幸せだった。ソウル・コンシャスに生きていたからだ。かつてのソウル・コンシャスであった自分へと遡行する旅は、信頼と安心に満ちた場所へと向かう旅でもある。読了後のあたたかな気持ちを、ぜひともあじわっていただきたい。
ロジャー・コール医師が愛情をもって書き上げた本を、愛情をこめて訳しました。
本書の翻訳作業中に思いがけない病に倒れた訳者の回復を祈りながら、上野圭一さんと編集者の高松完子さんがこころをこめて世に送り出してくださった一冊です。深い深い愛情のこもった本書が、愛する人との死別に苦しんでおられる方々の、介護に従事しておられる方々の、そして本来の自己を実現したいと願っておられる方々の一助となることをこころから願っています。
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