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ホメオパシー 海・森・大地の見えざる医師たち

ホメオパシー 海・森・大地の見えざる医師たち

伴 梨香著
新潮社 02.11
1,260円(税込)

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 ホメオパシーに興味をひかれたのは1983年、A.ワイルの『人はなぜ治るのか』を翻訳していたときのことだった。ワイルは同書で、みずからのホメオパシー体験を踏まえながら、現代医学の方法とはまさに正反対といってもいいホメオパシーの不可解な「謎」について若干の考察をしていたが、「健康と治癒」全般を巨視的に論じた同書では、当然のことながらホメオパシーに割けるページ数には限界があり、そのことが訳者に(たぶん読者にも)「もっと知りたい」という欲求を起こさせたのだろう。

 その後、日本語で書かれた(または日本語に訳された)ホメオパシー関連の本が出るたびに期待をもって読んではいたが、残念ながら、新しい知識は得られたものの、「謎」の解明にじゅうぶん応えてくれる作品には巡り合えず、失望感を抱きはじめていた。2年余まえに新潮社から本書が刊行されたことを聞き及んでいながら、なんとなく手にとりそびれていたのは、そんな経緯があってのことだったと思う。

 最近、縁あって遅まきながら本書を精読する機会にめぐまれ、刊行当時に読まなかったことを後悔した。というのも本書によって、あたかも『人はなぜ…』の続編を読んでいるかのような、スリリングな読書の愉しみを味わうことができたからである。
 類書とおなじく、本書も「謎」を解明してくれているわけでは、けっしてない。しかし、「謎」に迫る著者の姿勢にドクマ的・原理主義的な偏りが微塵もみられず、ワイルのそれに匹敵するような、絶妙なバランス感覚を終始失うことのない文章が読者を先へ先へと駆り立てる力になっているという、類書にはない美質を備えている。

 いま話題のニッポン放送でディレクター職にあった著者の伴さんは、退社後、かねて関心をもっていたCAM(補完代替医療)の取材を開始。その過程でホメオパシーのレメディを服用し、深遠な体験をしたことから探究にのめりこみ、膨大な「マテリア・メディカ」の世界に分け入ることになった。

 インターネットを駆使してホメオパシーの国際的な研究情報を俯瞰しながら、一方で由井寅子氏、永末昌泰氏など先達の仕事に触発され、帯津良一氏の臨床経験に学び、しかもそのいずれの立場にも身を置くことなく、科学性と霊性の両面から事実を冷静にみつめていく著者のバランス感覚のよさは、おそらくかつて放送ディレクターであったことと無関係ではなさそうだ。

 ホメオパシーが「謎」の解明をみるまでには長い時間を待たなければならないだろう。あるいは「解明」など、永久になされないかもしれない。それでも人間が癒しを求めつづけるかぎり、ホメオパシーが重要なメッセージを発しつづけることだけはたしかだろう。そのメッセージは間違いなく、いのちの秘密に直接まつわるものであるはずだ。

 本書は読者にそんな確信を抱かせる、すぐれた探究の報告書である。

 なお、著者は本書の出版直後からギリシャの著名なホメオパス(ホメオパシー医)であるヴィソルカス氏が主宰する学校に編入して本格的にホメオパシーを学びはじめ、今秋には卒業の予定であると聞く。書き手としてだけではなく、臨床家としての活躍も期待したい。(上野 圭一)

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