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身体が「ノー」というとき〜抑圧された感情の代価 ガボール・マテ著 伊藤はるみ訳 |
人はなんと悲しいのだろう。
なんと奥深い病の考察なのだろう。
もらい泣きしたあとの爽やかさにもにた感情を味あわせてもらった。そして、人が愛おしくなった。
この本を何の本かと問われたら、一瞬答えに窮する。一般的には帯文にあるとおり、 「『いやだ!』『ノー』と言わなければ、結局、身体がわたしたちの代わりに『ノー』と言い始めるだろう」
という「感情と病」の関係を、疫学的な患者へのインタビューから精神神経免疫内分泌学の深奥を探った本、となるのだろうが、私には、病と人生の物語りのように思えた。
著者が見つめた抑圧した感情の代価は、強皮症、慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、全身性エリマトーデス、多発性硬化症、筋側索性硬化症、アルツハイマー、がんなど難病といわれるものだ。
登場する人は、著者が看た無名の患者だけでなく、たくさんの著名人についても引用されている。
ジュリアーノ元ニューヨーク市長、ヤンキースの名一塁手ルー・ゲーリック、トゥール・ド・フランスの覇者ランス・アームストロング、バルトーク、アーノルド・パーマーなど。
そして、ジャクリーヌ・デュ・プレ。
映画になった『ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ(原題Hilary and Jackie)』を見た方や、クラシックファンはご承知と思うが、幼少時から天才的女性チェリストとしてデビューし、寵児と評されたダニエル・バレンボイムと結婚、その後、多発性硬化症を発病し、1982年、42歳で世を去った。
著者はALS(多発性硬化症)や軸策硬化症などの神経症患者に共通した心的傾向として、母子間の共依存や虐待などによる「ノーと言えない性格」をあげており、その例として、デュプレを紹介している。大人になったら発症する予言をしていたとも。
さて、デュ・プレのバッハ無伴奏チェロ組曲を聞くとしよう。この情熱的演奏の根元にある情熱がどのような受難に由来したのか「チェロの声」に耳をすませながら。
(有岡 眞)
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