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幕内秀夫のがんを防ぐ基本食 幕内秀夫著 |
幕内秀夫さんといえば、『粗食のすすめ』シリーズがベストセラーとなり一躍有名になったが、一方で、帯津三敬病院などで長年、がんの患者さんの食事相談・指導を行っていることもよく知られている。
知られているが、では実際どのような指導をされているのかまでは——実際に指導を受けた人のほかには——あまり知られていないと思う。
幕内さんには、『粗食…』以外にも多数の著書がある。なのに、「がん」についてのそれはほとんどなかったからだ。“ほとんど”というのは、乳がんに特化した著書があるのだが、筆者がオトコであることと、また“代替医療とは何か”など食そのもの以外の解説や、データなどいろいろ入っていて、もっとシンプルかつストレートに“こうだから、こう食え”というような、帯津病院などで実際に患者さんたちに指導されているような内容のものが欲しかった。そこにようやく登場してきたのが本書だ。
幕内さんがまず言いたかったことは、テレビを初めメディアで日々垂れ流されている“○○はがんに効く”“××はがんを引き起こす”というような、「抗がん食材めっけ」「発がん食材探し」に惑わされるな、ということだ。これら情報が無意味だとは言わないけれども、いずれも患者の1人さえ診たことのない、いわば臨床なき研究者たちが研究室の中で、例えばラットを実験台に抗がんあるいは発がん物質だと思われるものを大量投与して得られた結果でしかなかったりする。ばかりか、そのあとに、その結果を打ち消すような研究成果が発表されたりすることも多々あるからだ。
「お茶をよく飲む地域には胃がんが少ない」という発表で、低迷気味の日本茶業界が盛り上がった数年後、「そんな結果は得られなかった」というデータが出されたことを憶えているし、最近笑ったのは2006年の2月、特保にもなっている大豆イソフラボンについて、農水省が「乳がんや前立腺がん等の予防が期待されるが、一方、乳がん発症や再発のリスクを高める可能性もある」というわけのわからない発表を新聞で目にした時だった。
だから、こうした枝葉末節な情報に右往左往しなさんな(右往左往する人たちを、「みの×××症候群」と幕内さんは呼ぶ)。日本人として、正しい食事を摂っていればいいんだよ……ということなのだが、それができていないことこそが問題なのだ、と幕内さんは次に指摘する。
そこで、本書は、「まず、この50年を見直すことから」始まる。50年ほど前に始まり、繰り広げられてきた“日本的伝統食崩壊運動”という人体実験の結果がいま現れているのであり、かつては年寄りがなるものとされてきたがんの低年齢化と増加という状況になっているのだ、と。
では、どうすればいいか。そこは『粗食…』以来一貫して提唱してきた“伝統的な日本人の食”を取り戻すことであり、それは簡単に言えば「ごはん+味噌汁+漬け物」を基本にした食事だという。他の食事療法——例えばゲルソンとか甲田式少食法など——厳しいそれらに比べたら何とも気が抜けるかもしれないが、なに、そのことすら実行するのがむずかしいのが平成のボクらのライフスタイルで、そこでボクやアナタのライフスタイルに合わせて、どうやったらいいかということを(あたかも帯津病院で相談しているがごとく)細かく指導しているのが本書なのだ。
「食事療法ではなく、いつの間にかそれが普通の食事になること」だと幕内さんは言う。だから理想を押しつけない。幕内さんの言い方を借りれば、“100点満点は目指さない。70点を目指そう”。
例えば、理想は50年前のように朝食6時、昼食12時、夕食6時(夕食というからには、このへんの時間でなければならぬ)だが、ボクもアナタもそんなわけにはいかない。夕食など9時、10時になることも少なくない(これはもう夜食である、と幕内さんは言う)。
ならば、どうするか。
勤め人なら、昼食は手作り弁当がベストだが、そう指導して実行した人は1人もいなかったらしい。そうすると外食か、コンビニなどでのテイクアウトとなる。だったら、ベターな選択を考えよう。
現代人は、オトコの夕方の缶コーヒーを初めとして、飲料でカロリーを摂りすぎている(これを「1億総点滴時代」と称す)。これも現代人の食生活では大きな問題だ。
夕食が夜食になりがちである。ではどうしましょう。
……で、それらをひとつひとつ実行すればどうなるか。朝、ほどよい空腹感で目覚めるから、朝食からごはんが食べられる。朝食にしっかりごはんが食べられれば、昼食はもりそば程度ですむ——と、「ごはん」を中心にした食生活に変えていける、という提案なのです。
ちなみに、2003年に厚労省が発表したデータで、「味噌汁を1日3杯以上飲む人は、1日1杯以下の人に比べ、乳がんの発症率が低い」というものがあったが、これについては、1日3杯以上味噌汁を飲む人というのは、味噌汁もがんにはいいのだろうが、視点を変えれば1日3食、少なくとも2食はごはん食の人のはずだと考察する。「和食」というと、「どんなおかずか」が問題になりがちだが、そうではなく問題は「いかにごはん(コメ)を食べるか」であり、その上でどういうおかずがベターか、というのが本書のポイントだといっていいと思う。
さらに、過去数千人に会ってきたというがんの患者さんの臨床例から具体的なケーススタディがあり、巻末には帯津三敬病院の帯津良一先生との対談も収録されていて、この対談も含蓄に富んでいる。
(麻生タオ)
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