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特 集

パッチ・アダムス 愛とユーモアで癒す医師

Dr.パッチ・アダムス、「代替医療」について語る。

Patch Adams,MD

 ぼくは、ことばとしてはAlternative Medicine(代替医療)よりも、Complementary Medicine(補完医療)という方が好きなんだ。というのは「オルタナティブ」と言った場合、“いまある医療に取って代わるもの”というニュアンスがあって、現在の医療に対立してしまうからね。そうではなくて、現代医療に対して補完的なもの、現代医療に欠けているものを補うもの、あるいはその上に足し加えていくものだ、とぼくは考えているよ。

いま医学・医療の世界には、“技としての医療”と“ビジネスとしての医療”、この2つがあるとぼくは思う。“技=アート”としての医療という場合、医者は、“患者のためになることは何だろう”ということを常に考える。「この人に何をしてあげるのが一番だろうか?」ということが最初にくるわけだよね。で、補完医療は、いま行なわれているさまざまな現代医療——科学的な医療といわれているもの——に比べて、患者に提供した場合、コスト面でかなり低くなるわけだ。しかし、“ビジネスとしての医療”を考えると、補完医療が入る余地はないよね。なぜなら儲からないから(笑)。そしてアメリカにおいては、医療がビジネスになったために、アートとしての医療が壊れてしまったんだ。

さらにもうひとつ、現代医療における問題がある。それは、医者に「自分はすべて知っているんだ」「自分がすべて答を持っているんだ」という傲慢さが存在すること。たしかにいまアメリカで医療を行なっているドクターたちは、技術についてはたくさんのことを知っているだろう。でも、「人を思いやる」ということを知らない。いまの医者たちを見ていると、検査のオーダーは非常に楽に出せるし、投薬の処方も楽にできるけれども、患者と30分、1時間話すのはとても苦手だ。

 ぼくの人生において、ビジネスとしての医療はありえない。本当の意味で「科学」といった場合、ぼくたちは常に心を開いて新しいものに対する問いかけや探求をしなければならない。真の科学においては、傲慢さ(arrogance)なんて入り込む余地はないはずなんだ。

もうひとつ、補完医療に関わることでいうなら、アメリカでは医療過誤というのが非常に問題になっている。だから、医者は決められたハコの中で仕事をしていれば安心してやれるけれども、そのハコを一歩出てやるのは怖いという思いがあるん。でも、こういった考え方は真の医療実践に入ってきてはいけない。ハコの外に出てはいけないとか、ほかのことをやってはいけないという考えが医療の実践の場に入ってはいけない。ぼくたち医者は癒しをもたらすのが仕事なのだから、癒しをもたらす人間(ヒーラー)は、まず患者のニーズがどこにあるのか、というのをしっかりと抑えなければならないと思う。

 また、補完医療にはもうひとつの側面があって、それは病を治療するだけではなく、患者に対してどうすれば健康になれるか、それを教育するのも補完医療の一部だということ。でも、それもアメリカでは非常に大きく欠けているよね。

 人生の中で、「愛」ほど重要なものはない、とぼくは思う。でも、そんなことは医学校では教えてはくれない。いや、「愛」を教えないばかりか、「思いやり」ということも教えない。ぼくが本当に補完医療というものを好きなのかどうかも、ぼく自身わかっているとはいえないんだけれども、ただ、ぼくにとってはすべてが「医療」というだけなんだ。患者を健康にし、患者の健康を維持できるものであれば、それはすべて「医療」だと、ぼくは考えている。

 じつはぼく、開業したときに、アメリカの医療法を破ったんだ。なぜかというと、当時、アメリカの医療の現場で鍼治療は使えなかったんだけれど、自分が開業するにあたって鍼治療を持ち込んだから。

 でも、ぼくは権力の下にある政治的な法よりも、医師が患者に対して持つ法のほうがずっと深いものだと思っている。

このコメントは、昨2002年8月末にNPO「21世紀癒しの国のアリス」の招きで来日したDr.パッチ・アダムスのプレス会見の席上、「代替医療についてどう位置づけているか」というカムネットからの質問に彼が答えたものです。

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