Self Healing
Medical Herb Lesson ー メディカルハーブ入門
1. 「ハーブ」とはなにか
若松 英輔
これから数回にわたって、メディカルハーブとその利用法について述べたいと思います。
まず、お話を進める前にハーブ(HERB)とは何か、ということの共通の認識をもつことから始めたいと思います。
言葉から見てもわかるとおり、ハーブというときは、一般的には外国(とくにヨーロッパ・アメリカ)の薬草を指すことが多いようです。しかし逆に、アメリカやヨーロッパの文献を読むとインドをはじめとするアジア、特に中国漢方の生薬が、メディカルハーブとして記載されているのに数多く出会います。日本人に身近なところでは、春の七草、秋の七草というような季節の変わり目に薬草、すなわちハーブを食する習慣は古くからあります。また、10年ほど前からブームになっているアロマセラピーに用いる精油もハーブから蒸留したものです。
ここで「ハーブ」というときは、上記の現状を踏まえ、「薬効がある植物」全般を指すということにしたいと思います。全般というと何でもハーブだという雑駁な感じがするかもしれませんが、もともと自然は雑然とした外見のなかに、整然とした秩序があるところにその偉大さがあります。人間は、科学という手段でその混沌からその一部を利用可能な状態に変化させているに過ぎません。
自然は人間を包み込む。人間もまた自然の一部である。この単純な真理に異論を唱える人は少ないと思います。しかし、この自然の認識が正しく行われるところに、人間は、同時にある畏敬の念を覚えるのではないでしょうか。
これから皆さんと一緒に考えるメディカルハーブ入門は最終的にはこの畏敬の念を共有したいという営み以外の何物でもありません。
人間は自然を凌駕し、支配するものであるという視点では、メディカルハーブを理解することはできません。少なくても私が考えるハーブの世界は、そのような窓から見るものには暗澹たる姿をあらわにするに過ぎないとさえ思われるのです。
3年ほど前、STEVEN FOSTERというハーブの研究家であり写真家としても世界的に著名な人物をたずねてアメリカに行きました。400種ほどのハーブを有機栽培で育てている農場での出来事です。彼は、私にこの中から、一番気になるハーブを選ぶようにといいました。
当時は日本で流通しているハーブの名称を知っているぐらいで、実際の植物には、まったくといってもいいほど触れたことはありませんでした。20分ほど時間が経ったころ、見たこともない、もちろん名前も知らない、大きな葉をもつ、鮮明な薄い緑色の植物の前に立ちました。その農場では、一つ一つのハーブに学名と一般名がもちろん英語で書いてあり、私が選んだ植物には「MULLAIN」という文字が書いてありました。
彼は、私にこういいました。
「合格だ。この農園のなかで今一番君に必要なハーブはこれだ」
そのときの私の状態は、熱が37度強、扁桃腺がはれ、痰があり、のどに痛みがあるというものでした。ハーブをご存知の方はお分かりになるでしょうが、今の私でも、メディカルハーブの知識に基づいて、上記の症状には、「MULLAIN」(マレイン)を選択します。不思議な体験ではありましたが、そこには自分で選んだという意識はなく、何者かに引き付けられたといった方が正確な事実だけがありました。
この出来事が、私にとってのメディカルハーブという砦への、文字通り「入門」でした。