Self Healing
Medical Herb Lesson ー メディカルハーブ入門
2. ハーブに触れる
若松 英輔
8月にインド・ダラムサラにいってきました。チベット亡命政府がある、インド北東の町です。標高1700mのこの町のいたるところに野生のハーブが群生していました。
日本でもっとも大きな市場を持つハーブは、エキナセアかイチョウだろうと思われますが、テレビで取り上げられることもなく、しかし代替品がないということで、根強い人気があるのが「ネトル」(Nettle)というハーブです。ダラムサラでもっとも多く目にしたハーブがネトルでしたので、今回はネトルをベースに話を進めてみたいと思います。
![]() 「ネトル」 |
ネトルは、和名を西洋イラクサといい、イラクサ科に属する、一見シソによく似た緑色の植物です。注意していると関東でも、「西洋イラクサ」ではない、イラクサを見つけることができます。
ネトルは、「天然のマルチミネラル」とでもいうべき豊富なミネラル分を含んでいます。葉にはとげとげしい小さなとげがついていて、このとげの成分が体内の浄化に働くといわれています。ネトルは、本来1年を通じて副作用を気にせず、万人に勧めることができるハーブのひとつですが、日本では花粉症への作用が有名になり、いわゆる「季節もの」になってしまいました。残念なことだし、もったいないことだと思います。
私としては、ハーブに直接触れる機会をなるべき多く持つことが最良の「メディカルハーブ入門」だと思うのです。最近はハーブを取り上げるテレビも多く、さまざまなところでハーブの薬効を勉強するところも増えています。ハーブに注目が集まるのは好ましいことではありますが、ハーブに対する認識にある偏りが生まれてきているのも確かです。
「ニンジンが血液を浄化する」、「グレープフルーツがガンを予防する」といえば、皆さんはあのオレンジ色のニンジンと黄色のグレープフルーツをすぐに思い出すことができるはずです。この「薬効と植物の一致」というのは、極めて重要なことです。これがハーブになると、植物そのものの認識がおろそかになるのはなぜでしょう。
もちろん、すべてのひとにこの「薬効と植物の一致」を強要するわけにはいきません。しかし、メディカルハーブにある深度の興味をもたれる方は、ぜひ、ここから始めていただきたいと思います。図鑑でもいいのです。イラストでもいい。知識だけでなく、イメージとしてハーブを記憶する、このことを習慣付けることが極めて重要です。
たとえば、今話題になっているローズヒップは、街角にあるかわいらしいあの茨と蔓(つる)の間に咲く薔薇とは似ても似つかない3〜5mほどの高さになる高木です。
生理痛の緩和にはたらく月見草の花は、イラストでみると黄色く可愛らしく見えますが、これも実物は2.5mもあり、人間を圧倒する姿をしています。
免疫力を活性化するエキナセアは、その姿をみているだけで元気になる、美しいピンクの花弁をつけた1mを超えるハーブです。
ハーブに触れるということは、ハーブと人間のあいだに調和を発見するということです。
この調和が治癒のはじまりなのです。知識としての論理にもとづく自然との調和というのは至難の業です。自然は常にわれわれの知識を大きく超え出る何者かであることは改めていうまでもありません。
「ハーブを知る」ということと、「ハーブについて知る」ということは別のことです。前者は友人や隣人としての態度であり、後者は検察官の態度でしょう。みなさんは、どちらの人間に自分の本当の気持ちを話そうと思われるでしょうか。自然も同じです。ハーブだけでなく、シートン動物記やファーブル昆虫記にあるのも、自然への友人としての接近です。それはハーブでも全く同じだろうと思うのです。
植物画では世界にその名を刻んだ牧野富太郎は、植物を見ていると自分のある「リビドー」(性のエネルギー)が刺激されるといっています。牧野は植物以外には何もないかのような生活のなかで、植物のなかにすべてをみることを実現していたのかもしれません。
次回は、「栽培と収穫」について書いてみようと思います。
