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2005/06/24

オルタナティブな町、英国トットネスからの便り4
トットネスのCAM

高田 彩子(在イギリス)

CAMは日常生活の一部

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トットネス・ナチュラルヘルスセンター

 オルタナティブな人々の多く住むこの街、トットネスでは、CAMも日常生活の一部といえるほど盛んです。トットネスには、1978年に英国国内で初めて開かれたナチュラルヘルスセンターをはじめ、ニューエイジ関連書籍を扱う店の階上などにもCAMのクリニックがあります。とはいえ、この地域の国民健康保険の運営する公立病院、医院のほうは、現代西洋医学による治療のみ。CAMとは完全な棲み分けをしています。

 英国ではところによって(都市部に多い)国保の診療にCAMが適応されるということもありますが、それは医師が個人的に自身の裁量でホメオパシーを使ったり、鍼を打つという範囲で取り入れる場合に限られています。また施設内にセラピストを置いていて入院患者に受けさせるといったところでも、外来診療代わりにCAMをつかい、国民保険が適応されるということにはなっていません。ですから、こうしたCAMのクリニックは一般医療ではありませんし、基本的には私費診療ということになります(民間健康保険のなかには、CAMをカバーするものもあり、セラピストがクライアントに保険会社に提出するための領収書を頼まれることもあります)。

 先日も、近くのオーガニックベジタリアンレストランの2階にTotnes Osteopathというクリニックがオープンしました(トットネスの街なかでCAMがうけられるセンター/クリニックとしては4軒目)。オステオパシー医のサイモンさんと銀行につとめるジャッキーさんのご夫妻が、もとは自宅であったフラットを改装して開業したものです。

 わが家のお隣のジェームスさんは、「イギリスでは、まだCAMを規制する法律がないため、医師のような国家資格を持たない人でも開業できる」といいます。彼自身はBritish Acupuncture Council (英国鍼灸師審議会)に所属する協会の認定資格者ですが、この鍼灸師資格も日本のような医療補助施設の開業権をもつ国家資格とはちがいます。

 

トットネスで受けられるCAM

 トットネスで受けられるCAMで多いのは、ホメオパシー、オステオパシー、鍼灸、指圧、アロマセラピー、リフレクソロジー、ハーバルメディスン、バッチフラワーレメディー、頭蓋仙骨療法、コアプロセス心理療法、レイキ、スピリチュアルヒーリングです。おもしろいのは、それぞれの療法の認定法や修業期間、また材料費が違うにもかかわらず、施術料があまり変わらないところです。たいていが1時間から1時間半を1セッションとし、25ポンドから30ポンド(約5000〜6000円)で、また1〜2割の低所得者割引を設けています。

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昨年12月にオープンした
オステオパシークリニック

 先のトットネスナチュラルヘルスセンターは登録社会福祉法人でもあり、寄付金制(いくら払うかはクライアントが決める)のセッション日を設けています。登録セラピストは1人につき週3時間無料で施術する時間枠を持つ義務があり、このセッションの収益はセンターの運営に回されます。クライアントはこの寄付金制のセッションを2回まで利用することができますが、以後はセラピストの決めた料金を払うことになります。

 トットネスのこうしたセンターやクリニックは非常にシンプルなつくりになっていて、受付に机と電話、予約台帳(コンピューターではない)、施術のための小部屋が3室程度。物品の販売などはしていません。受付業務はセラピストが交代でボランティアで行います。同センターの場合、バッチフラワーのレメディが自分でミックスできるように全種置かれていて、使った分だけを払うようなシステムがあります。ですから、数種類のレメディが欲しい場合に全部を1本ずつ買う必要はなく、空ボトルとレメディの滴数の実費を払うだけですむのです。

 

CAMを支えるプライドや思想

 だからといって、それらを商品として扱う近くの自然健康食品店からクレームがつくという話も聞きませんし、センターの寄付金制セッションの存在が他のクリニックのセラピストの仕事を脅かすということもありません。それは、こうしたオルタナティブな動きにかかわっている人々が60年代70年年代のカウンターカルチャーの影響を踏襲するため、スピードやハイテクを好まず、競い合いの商業主義には走らないというプライドを持つからともいえます。自分たちはあくまでソフトをあつかう立場にあり、セルフケアの啓蒙活動のために貢献するという姿勢を示しているようにも思えます。

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左から鍼灸師ジェームスさん、 ピラーティスプラクティショナー・ジャッキーさん、オステオパシー

 日本人の生活感覚からするとはたしてそのようなやり方で食べていけるのか? と思われるのですが、これらにかかわる人々はたいていが中〜上流階級の出身者であり、食べるためだけにあくせく働くという世界とはちょっと違う人生観があって、実際にも親類縁者からの資金援助や相続遺産にも恵まれている人も少なくないようです。

英国は社会福祉制度が充実していて、日本に比べると経済的不安感が少なく、そこそこに暮らしていければいいという意識があるのかもしれません。もうひとつは「本当に必要なもの(お金も含む)は必ず手に入る」というニューエイジ思想に由来する信仰(?)に支えられた精神的余裕なのかもしれません。

 

セラピーの"交換"もできる

 人々がCAMに期待しているのは、未病という程度の軽い症状への対応や慢性疾患(アレルギーや自己免疫疾患)の代替療法として、またがんや難病の治療に併行した補完療法として疲労回復、よく頑張った自分へのご褒美(?)などさまざまです。要するに開放感とリラックスからくる心身の安息と調和を得ようということのようです。また、セラピストとして働いていなくとも、セラピーの技術をもつ人が多いので、エコマネーのような考え方でセラピーを交換し合うこともできます。

 私はここに住み始めた頃、日本食をご馳走しては、スピリチュアルヒーリングや頭蓋仙骨療法などお返しに頂くというようなかたちでこれらのセラピーをかなり幅広く経験してしまいました。自分でお金を出して受けたセラピーもありますが、なぜかお金を介さずに受けたもののほうが印象的で効果もあったというような気がしてなりません。それは、食を介してその人の生活観や気心が知れるということや、セラピーによる人とのつながりが共感と調和によって成り立つということと関係があるからかもしれません。

オルタナティブな考えをもつこの街だからこそ、こうしたことができるのだといえるようです。

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