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2005/10/23
オルタナティブな町、英国トットネスからの便り5
トットネスの遺伝子組み換え食品反対キャンペーン
高田 彩子(在イギリス)
トットネスのフライデーマーケット
![]() トットネスのフライデーマーケット |
トットネスには、毎週金曜日の早朝から青空市場(フライデーマーケットと呼ばれている)が立ちます。
屋外に設置したテーブルやテントには、地元で採れた有機野菜や平飼い鶏の玉子、庭木の苗から衣料品、そして骨董ともガラクタともつかないような雑貨類がならび、たくさんの人々で賑わいます。
このフライデーマーケットは、トットネスの社交場としても知られ、あちこちで買い物籠を脇に抱えたひとびとが立ち話をしている姿をみかけます。天候の良い季節にはストリートミュージシャンや大道芸人も加わり、ちょっとしたお祭りの雰囲気につつまれます。
そんな和やかな空気に、まったく違和感を与えることなく、「遺伝子組み換え食品反対運動」のブースが、先週の金曜日にもでておりました。これまでも、「緑の空き地を守る」や「住宅政策改善」「メインストリートを歩行者天国に」といったスローガンを掲げる団体が、それぞれ活動をしていましたが、このGM(Genetically Modification:遺伝子組み換え)反対グループの活動は、今年で7年目に入る、息の長いものです。
トットネスの反対グループの成り立ち
そもそもの始まりは、近くの有機栽培農地から、たったの200メートルしか離れていない土地に除草剤に耐性を持つGMとうもろこしの試験栽培計画が立てられたことに端を発しています。農家と地元住民の反対運動の結果、周囲の環境を考えない試験栽培は違法として処理されたものの、いったん植えたものを廃棄する義務はないとの考えから、栽培が継続されることになりました。この結果に納得しないトットネスの女性活動家ふたりが、ある晩畑に忍び込み、作物を手で引き抜くなどの強硬手段をとりました。程なく逮捕されたこの女性たちを救うための活動も加わり、地元住民7~800人をも巻き込んだ騒ぎとなりました。その後も、全国各地の反対運動グループと連携をはかり、ニュースレターの発行や有機栽培農家への支援などがつづいていました。知り合いのミュージシャンは、資金集めのためのコンサートにノーギャラで出演したり、シュタイナースクールでは、オーガニック食品をもちよったピクニックが開かれたりしました。
最近の活動
こうした活動のなかで、GM作物市場は、完全とはいえないまでも、急成長は抑えられ、英国での実験的栽培を見限った米国の種子会社が撤退をはじめたというニュースが聞かれるようになりました。とはいうものの、安い輸入穀物に頼る、酪農や畜産品には、食物連鎖によるGMの影響がないとはいえません。このため、政府は3年の猶予期間を与えた上で、GMの影響を受けるであろう食品の表示義務化を制定しました。
![]() トットネスの遺伝子組み換え食品 反対キャンペーン |
先週ブースを覗いたときは、大手スーパーマーケット「センズベリー」に対し「GM飼育の乳牛からつくられた乳製品を明示し、消費者の選択権を守れ」という請願書に署名が集められていました。また、家族経営など小規模酪農農家がスーパーマーケットに牛乳の卸値を買いたたかれることで、安いGM飼料を買わざるをえないという状況への対応(有機栽培ではなくても、非GM穀物飼育の乳製品をGM製品より高く買い上げ、消費者がわかるように表示する)をもとめる手紙をスーパーマーケットに送る作業(あらかじめ印刷された手紙文に各人が署名をして郵送する)をすすめておりました。
イギリスでは、企業や行政に対しての苦情や改善を求める手紙は、非常に真剣に受け止められるという印象をうけます。こうした手紙には、ほぼかならずといっていいほど長々とした説明をふくめた理由づけ、または簡単な謝罪の言葉が回答として返信されます。
ですから、私がこの手紙に署名し、郵便切手代を寄付した翌週には、「センズベリー」の重役代理から「この問題に対する調査をすすめ、結果をお知らせすることを約束いたします」との返信を受け取りました。
トットネスのゆるーいコミュニティ感覚
![]() ストリートで演奏するミュージシャン |
トットネスでこうした、キャンペーンが起こり、根気よく続けられる理由には、この街の人々のオルタナティブな価値観というベースのうえに、大小含め、あちこちで開かれるワークショップやら、ご近所の誰かの家に集まったときに話題に上るといったコミュニティ的なライフスタイルが無関係ではありません。近くの環境問題、持続可能社会、経済学専門のカレッジ(シューマッカーカレッジ)という学習環境が、こうした問題へのキャンペーンリーダーを育てるという流れもあって、それらが縦横無尽に循環しあった結果であろうと思います。
ですから、こうした活動に参加している人々は、動機も熱の入れ方もそれぞれ差はあるにしても、近代化で失われつつあった自然への畏怖という根源的な感覚を求める気持ちと、こうしたことに鈍感な利益追求の企業にたいする怒りを表しながらも、人と人とのつながり、つまりこの街の住人であることを「楽しんでいる」という、印象を受けます。
そうした中にあって、共同体を称している集まりとは違う「風通し」を感じられるのは、この街がイギリス南西部の風光明媚な観光地、中世の城下町でもあるという側面、オルタナティブな人々と共存できる「そうでない人々」がたくさんいることなどで醸し出される雰囲気のバランスがあると思います。それに一役買っているのが、同じ場所で何世紀もつづいている「フライデーマーケット」の一つの姿と言えるでしょう。
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