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2005/12/22
アントロポゾフィーにおける看護について
山本記念病院・医師 山本百合子
毎朝、病院へ出勤するために、私は東へ向かって車を走らせます。真正面から朝日を浴びて目的地へ進んでいきながら、新しく始まる今日という日を感じるこの時間がとても好きなのです。「夜のフクロウ型ではなく、朝のカッコウ型の生活パターンを持っているのでしょう」とミヒャエル・グレッケラー先生に笑いながら言われたことがあります。毎年5月に行われている国際アントロポゾフィー医学ゼミナールでのことでした。グレッケラー先生は、ゲーテアヌム医学部門代表で、この毎年のゼミナールの統括者です。
![]() INC-session6でアントロポゾフィーに ついて語る山本百合子さん(05.11) |
皆様は「アントロポゾフィー」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか?
アントロポゾフィーというのはルドルフ・シュタイナーの精神科学を表し、「人間であることの意識」であると述べています。シュタイナーは、1861年にハンガリーで生まれ、1925年にスイスのドルナッハで亡くなりました。若い頃から精神科学の探求を続け、30歳で哲学博士となっています。52歳でアントロポゾフィー協会を組織し、その後、精神科学だけでなく、オイリュトミーという運動芸術を創始したり、建築物の設計を行ったりしました。社会論と経済学にも力を入れて熱心に講演を行い、また精神科学人間観に基づく教育を推進し、いわゆるシュタイナー学校をつくったり、農業の講習会を開いたりしています。(シュタイナー農法)。
そしてオランダ人女医のイタ・ヴェ−クマンと共同で、アントロポゾフィーに基づく医学を創始しました。それが前述の国際アントロポゾフィー医学ゼミナールの基になっている医学の体系なのです。
この医学の基本をなす精神科学というのは、単に心理学に止まらず霊性までを探求の対象としており、宗教のように信仰を基礎とせず、自然科学的な思考方法をとるという厳密な科学的態度を重視したものです。この医学を学ぶための国際アントロポゾフィー医学セミナールは、世界各地で開催されており、日本では2004年から開催されるようになりました。
私も過去2回のゼミナールに医師として参加して、治療者としての自分が如何に未熟であるかを痛感すると共に、「ひとりの病める人に対しての治療とは、その人まるごとを治療しなければ意味がない」と、さらに強く思うようになりました。
病める人とその人をとりまく医療従事者と環境もすべてが一体になって、治療が進でいくことが本当の治療にあると気づかされたというべきなのでしょうか。これは、昨今言われているチーム医療ともいうべきもので、医師、看護師、オイリュトミスト、芸術魔法士が、一体となって治療に関わるアントロポゾフィー医学では当然のことなのでした。
この中でも、特に長時間、病める人と時を過ごすことになる看護師の役割は大きく重要です。その視点でアントロポゾフィーの看護について、私なりに考えてみたいと思います。
そもそも看護というのは何なのでしょうか?
広辞苑には「傷病者に手当てをしたり、その世話をしたりすること」とあり、「手当て」を引いてみると「(1)前もってその用に備えること、また、そのために配置される人 (2)てだて、手段、対広策、処置」とあります。通常の医療機関で看護師さんたちが行っている業務をみていると、私たち医師への補助行為が主で、病棟でも配薬や、点滴の管理、記録などで追われていて、本来の手当てやベッドサイドでの世話にさける時間が本当に少ないのが現状だと思われます。
それに対し、アントロポゾフィーは、患者を理解し、その患者に合わせた治療の一環としての看護を行うことになるのです。手技としては薬草でのオイルマッサージ、温湿布や冷湿布を用いた療法を用いるなどですが、それらは痛いから湿布を行うといった症状別の手技ではなく、患者にたいする観察力、的確な全体状況把握を伴った、看護法でなければならないのです。
さきに述べたゼミナールで、看護師のグループワークに参加させてもらい、オイルマッサージの実技を見学しましたが、指導者のマンジョリス看護師のマッサージは、ただただ、ソフトでやさしいというだけではなく、被験者の皮層だけでなく、その存在に心を添わせて、いるようにみえました。そこには治療者として患者への深い共感がみられたのです。
ゼミナールでのグレックラー先生の講義の中にこのような言葉がありました。「私たちは、人間に起こり得る全ての事柄に対して、人間のもつ弱さ、絶望感、問題点なども含めた全てに対して、愛と理解を持つことが要求されます。なぜなら、私達は治療に関わる者だからです」
アン・ジョリス看護師の姿から、「患者をケアすることは、生命の力に共鳴すること、ケアすることは感動すること」であることが大変よくわかりました。
今後、どんどん先端医療が発展したとしても人間の本質にかかわるケアが益々必要とされるようになるでしょう。来年の4月29日から5月5日にかけて第3回のゼミナールが開催されます。グレックラー先生とアン先生も講師として来日されます。より多くの看護師の方にシュタイナーのアントロポゾフィーの看護の意味するところを学んでいただきたいと願ってやみません。
※山本百合子先生の「総合診療部」では、さまざまな代替療法が取り入れられています。
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