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2005/12/22

オルタナティブな町、英国トットネスからの便り6
環境問題、持続可能社会などについてユニークなかたちで学べる
シューマッハー カレッジ

高田 彩子(在イギリス)

貧しさの本当の意味

 先日、アフリカの飢餓問題等を議題とするG8サミット(主要8カ国首脳会談)がスコットランドで開かれるのを前に、トットネスの街中には「Make poverty history 貧困を葬れ!」と印刷された紙があちこちに貼られていました。

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15世紀の牧師館が校舎

 近くのカフェでは、サミットに先駆けてひらかれたライブ8(アフリカの飢餓、マラリア、エイズを救うためのチャリティーコンサート)の模様をビデオ上映するなどトットネスのオルタナティブな人々の関心の高さが伺えました。そして同じ週にロンドンで、テロが起こりました。

 そんなフクザツな空気につつまれた7月なかば、私はシューマッハーカレッジのコースディレクター(企画担当)サティーシュ クマール氏の講演を聞きに行きました。

 インドから、70年代にイギリスに移住した平和運動家でもある彼は、「Poverty:貧困」という言葉の本来の意味について、話し始めました。

 各国首脳が貧困を解決するための援助金を論じ合っている時勢をうけて「後進国の貧困は我々先進国に暮らすものの贅沢なライフスタイルの結果ではないか」Poverty:貧しさの本来の意味は「つつましさ」や「足るを知る」ということであり、はたして世界中から目の敵にされるべきことなのか?という疑問を投げかけました。そして問題の根は、アフリカの「貧困」そのものにあるのではなく、我々の住む社会の「貪欲」のほうにあるということを指摘しました。

 そのとき静まり返った聴衆に、便利な生活を享受する者が、その「うしろめたさ」をチャリティで埋め合わせることで折り合いをつけようとする姑息な善意?を見透かされてしまった動揺を感じました。

 

足るを知る……の暮らしと経済

 ロックスターによる派手なチャリティコンサートとアフリカ飢餓問題という組み合わせに、漠然として言い表せない「違和感」を感じていた私は、このときに初めて先進国による「援助金による問題解決の方法」への限界を実感しました。ひとびとが「俺ってビッグ!」の経済的成功を賞賛しつづける限り、この構造の根本解決にはつながりにくいのではないかと思えたのです。

 ご存知の方も多いと思いますが、シューマッハーカレッジの名前は、『スモール・イズ・ビューティフル』の著作でしられるE.Fシューマッハー氏(イギリスでは、シューマッカーと発音されますが)の思想にちなんで付けられたものです。

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トットネスのお店のショーウィンドウに
貼られた”Make poverty history”

 シュマッハーの思想には、ものごとをゆっくりと手作りすることで得られる深い満足感を失った現代人の生活への疑問と反省。 そこにある、果てし無い消費的生活への渇望と消費のための消費へと墜ちこ込んでいく精神的荒廃が作り出すストレス社会への批判こそが、新しい経済社会への展望として語られなければならないという問題提起があると思えるのです。

 それは、「足るを知る」という教えとして古くから言われてきたことでもあるかもしれません。

 この講演でサティーシュ氏は精神的な生活の実践として、大量生産の大量廃棄に働く抑止力として家庭でパンを焼くことを勧めていました。

 我々が物質的な豊かさと便利さのために犠牲にしてきたものについて真剣に考えなければならないときが来ているということは、誰しもが感じていることなのではないでしょうか。

 

ユニークな学びのスタイル

 シューマッハーカレッジのコースでは、環境問題と持続可能社会をキーワードに、1~3週間の合宿コースが一年を通して開かれ、毎回世界中から多様な講師が招かれます。

 このコースの特徴は、お料理や農作業や瞑想といった実習が組み合わされているところにあります。

作ることと食べることを通して、健康のこと農業のこと経済のこと環境問題のことをカラダで考え、社会を変えるチカラをつけようという試みです。

 

世紀を超えた思想家たちの綴れ織り

 サティーシュのパンの話は、マハトマ・ガンジーが、インド独立後の市民にインドの進むべき道は工業化にあるのではなく、糸車を廻すことに象徴される、農村社会の再建。糸を紡いだり、畑を耕したりして、衣類と食糧を得ていく、この基本的な営みを皆がやるようにならない限り、非暴力の社会は実現できないと言う主張と重なるところがあります。

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瞑想のための部屋

「人と文明と自然の共存」

 シューマッハーカレッジは、タゴールの思想に共鳴したエルムハースト夫妻によって築かれたダーティントンホールトラスト(1920年代〜)という財団の事業の一環ですが、その遺志は、前世紀からこの土地の事業に流れつづけているテーマといえます。

 このカレッジには、非常に幅広い年齢層(20~80歳)が、そして幅広い背景をもつ社会人が世界各地からあつまることでも知られていますが、これらの思想家たちの魂が、時空間を越えてとどいた結果なのでしょうか。

参考文献:

『ガンジー自立の思想』 M.K ガンジー/片山佳代子訳/地湧社

『スモール・イズ・ビューティフル』 E.Fシューマッハー/小島慶三訳/講談社学術文庫

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