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2006/07/09
オルタナティブな町、英国トットネスからの便り9
トットネスの男、トットネスの女——あたらしい家族のかたち
高田 彩子(在イギリス)
既オルタナティブタイプ(オルタナティブな価値観をもつ人々)のシンプルな定義はありませんが、具体的な行動レベルでのチェックリストを作ることは可能かもしれません。たとえば、「ベジタリアンである」とか、「天然素材の衣服を好む」とか…。そんな役立たずな(?)リストを作るとして、絶対に外せないものがあるとしたら「共存的パートナーシップを求める」という項目だと、オルタナティブな町に住んで日々感じています。
すすむ婚姻離れ…ふえる事実婚
英国は、他のヨーロッパ諸国にくらべても、離婚率の高い国です。私が、旅行や留学でお世話になった複数のホストファミリーも再婚家庭が多く、前妻や前夫に関する話題がよくあがるという点で、日本にあるようなタブーはまったく感じさせません。
![]() 慈善事業に積極的なトットネスの主婦たち スポンサーを募り、万里の長城に登ることで褒賞金を寄付するというチャリティ |
このように複雑化する家族関係の影響もあってか、トットネスには、婚姻関係を結ばずに子育てするカップルや子連れ同志で再出発するファミリーも多く、子どもの姓をダブルバレルネームと呼ばれる2つ姓で名乗る人々が目立ちます。婚姻に関する法律が日本とは違うため、事実婚でも家族としての保障などが、ごくあたりまえに受けられるということもあると思います。
ちなみに、わが家のような国際カップルは、偽装結婚による不法入国の取り締まり対象となるため、婚姻による滞在許可が必須でした。昔ヒッピーで離婚経験のある夫は、「再婚」しかも「移民法のため」ということに、相当な抵抗があったようでしたが、日本で平凡な家庭ばかりを見て育った私には、その「抵抗感」の意味するところが、なかなかつかめないままでした。
子育てを通して知り合うトットネスの女性たちを見ていて、しだいに気がついたことは、伝統的な婚姻が暗喩する男女の役割分担におおいなる疑問をもっているということでした。もともと家事好き、世話好き日本人の私は、彼女たちの冗談バッシングに、何度叩かれたことか…(笑)。先進国に著明なフェミニズムに、オルタナティブ=男性も含む権威(終身雇用など)からの解放が加勢すると、家庭を支える条件がどんどん変わってゆくのです。
自由と自己を求めて
トットネスでは、主夫と自由業を兼ねる父親とか、キャリアウーマンを脱皮して自営業をめざす母親とか、それぞれが綱渡りのような工夫のうえで家庭を築いたり、壊したり(?)という試みを目の当たりにします。リスクはあるものの、退屈とか惰性とかいう言葉とは無縁のシアワセと、「本当の自分」を求めて動き続けていることが伝わってきます。
英国にはスモールビジネスを始めるための低利息支度金貸与とか、低所得世帯への経済補填、シングルマザーへの生活保障など、ひとりひとりが身内に依存せずとも自立に向かえるような社会保障制度があります。トットネスのオルタナティブな人々は、こうした制度を上手く利用している人と依存したまま自己を見失っている人など、いろいろですが、英国独特の他者に干渉しない主義も手伝ってか、ある種の平穏な空気をつくりだしています。
こうした空気につつまれていると離婚、失職というのは、特定の価値観から生まれるマイナスイメージであることに気がつきます。オルタナティブな人々は最愛の人と居ることと好きなことをしながら糧を得ることに、正直で真剣なのかもしれません。たとえ、それが傍目には失敗続きに見えたとしても…。
家族というカタチの新しい支え方
両親が、伝統的な妻と夫の役割を返上したとき、子どもは無事に育つのか? という疑問が残ります。私がトットネスの人々を見る限りでは、まず、大丈夫なようです。むしろ、そんなカップルの将来は、からの巣症候群や定年後のうつ病にみられるような依存生活のツケの心配がいりません。
オルタナティブなタイプが求める社会的権威(窮屈な安定)からの脱皮は、陰で英国の福祉制度への依存(程よい安定)に支えられているといえます。父権的象徴性をもつ社会や国家が敵であると同時に味方でもあるところが、やや皮肉っぽくもあり、面白いところだと思います。またトットネスでときどき見られる、ハウスシェアと呼ばれる大きな家を複数の家族や単身者で共有して住むスタイルにも、血縁の家族(窮屈な関係)を脱したあとに、共同体(程よい関係)として新しい家族関係を構成する姿が見えるのです。
このような精神的、経済的相互共存生活の試行錯誤には、少なくとも、現代社会に蔓延する問題の突破口を感じます。自分を保ちつつ、他者と共存できるバランス感覚のなかにオルタナティブな生き方の未来があるような気がします。
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