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2007/02/07
「音を観て、光を聴く」旅へ。
■ 龍村仁監督作品『地球交響曲第六番』を観て
有岡 眞(CAMUNet)
![]() 地球交響曲第六番 |
唸った。
龍村仁監督の新作『地球交響曲第六番 全ての存在は響きあっている』の試写を見てのことである。
今でも釧路湿原でスピリット・キャッチャーという弓を回す奈良裕之さんの姿が目に浮かぶ。弓にはった弦がびゅんびゅんといううなり音が響く。厳寒の釧路湿原を吹きすさぶ風音が響く。動物を狩る道具である弓が、たんなる殺戮の道具でなく、自分たちを生かしてくれる他の生命に呼びかけ、その魂に感謝する「祈り」の道具として使われ、わたしたちの先祖はこの弓を「ウインド・キャッチャー」とか、魂を捕らえるものの意で「スピリット・キャッチャー」と呼んだのだそうである。
三原山火口で天然空洞木を吹くKNOBさんの音ディジリドゥは、大地の地鳴り音である。いや、そこに遠景で映る彼のシルエットがなければ、誰もが三原山の地鳴りと思うだろう。その姿は山の神に呼応して祈りを捧げているかのようだ。
那智の滝を背景にした雲竜さんの笛は落下する滝の音に溶け、熊野で長屋和也さんが打つ石板の打楽器音は、新宮の神倉神社のことびき岩の磐座の音である。長屋さんは小さいときから岩が出す音が聞こえ、悩んできたという。岩の音を伝えるのが天命と気づき、岩の演奏者となった。
神社のご神体とされる岩や日本各地に広がる巨石、神々が降臨したとされる磐座(ある種の岩)に朝日や雷がおちたときに放射するエネルギーの周波数帯が極低周波(ELF)とされるシューマン波で、植物の成長に欠かせない電磁波帯であることを伝えてくれたのはフィリップ・カラハン博士だった。長屋さんは、極低周波を聞いたのだろうか?
音を聞いて色を感じたり、文字を見て色を感じたり、声を聞いて匂いや香りを感じたりすることを共感覚という。磐座を見て音が聞こえた長屋さんの話は異常ではない。NHKで放映された英国BBC制作の番組では、イギリスにはこうした共感覚者が人口の1割はいると言っていた。カム・アウトして自ら共感覚者であることを告げる人も増えてきた。もともと、わたしたちの文化は共感覚をたくさん伝えている。
「秋きぬと目にはさやかに見えねども、風の音にぞ驚かれぬる」も、「見渡せば花も紅葉もなかりけり、浦の苫屋の秋の夕暮れ」もそうだ。日本庭園の枯山水は川や滝などの水を使わないことで石で水を感じさせたのだという。古人の感覚の鋭敏さを伺わせるにじゅうぶんである。「虚空の音」と名づけられた前述4人の日本人奏者の音は、音楽の始原にある音響と人との交歓のかたちを見せてくれる。「そこでは、音は光であり、光もまた音である。耳には聴こえないはずの光の音を彼らはわたしたちに届けてくれる」のだ。
『地球交響曲第六番』では最初と最後に「おりん」がわずかの時間映る。おりんはもともと仏壇の前で鳴らす仏具で、いわば和製チベタン・ボウルだ。クリスタルボウル・プレイヤーの牧野持侑さんも使っている。CAMUNetがここ何回か催している牧野さんのクリスタル・ボウルのライブに参加された経験をお持ちの方なら、その音のなかにいくつもの倍音が含まれているのを聞いただろう。さらに、その先に聞こえない高周波まで共鳴しているのを体感された方もいるかもしれない。
可聴領域外の高周波に生理活性作用があることを報告したのは芸能山城組を率いていた大橋力さんだが、その生理作用は聴取後にひきおこされるのだという。
わたしたちが耳にする自然音にたくさんの「倍音」がふくまれているのはよく知られている。谷川のせせらぎ、木の葉のざわめき、鳥や蝉の声、虫の音……自然は倍音の宝庫だといっていい。
世界が振動しているのはあなたの腕時計を見ればいい。クリスタルクォーツは水晶の固有振動数を利用している。世界は振動しているのだ。耳に届かない振動のなかで倍音だけが共鳴し、耳に届くようになった。2つの音叉の一方を鳴らすともう一方が鳴り出すように共鳴したのだ。
シタールという楽器には共鳴弦があると、メインゲストのラビ・シャンカールは「音は神なり」の章で語る。あの不思議な陶酔を呼ぶ音色は共鳴ゆえだったのだ。
わたしたちはなぜ美しいものにひかれるのか? いや、なぜそれを美しいと認識するのか、美しいと呼んだかの謎がここに語られている。耳に届かない音まで含めて、世界は振動し、音となり光となって、響き合っている。
宇宙・地球・海・山・川・森・岩・植物・動物・昆虫・バクテリア、あらゆる存在がそれぞれの響きを奏でている。そうした環境のなかで、わたしたちの感覚もまた育まれてきたものとしてあるのだ。どうしてそのことを歓ばずにいられようか?
音から音楽への美しい旅をくれた龍村監督に感謝したい。また、CAMUNetの皆さんにも、『地球交響曲第六番』をぜひ体験していただきたい。五感ばかりか第六感まで開いて深く味わってもらいたい。
●『地球交響曲』の公式ブログ http://jtatsumura.exblog.jp/
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