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2007/02/07

オルタナティブな町、英国トットネスからの便り10
医、食、農そして栄養…その複雑な相互関係を説くW・クックさんとその著作

高田 彩子(在イギリス)


シュタイナー建築を専門とする
大工マークさんに
海苔巻きを勧めるウェンディさん

 「栄養を正しく理解できること すなわち、それが治癒の始まりである」

 ルドルフ・シュタイナーのその言葉ではじまる『Food Wise』(by Wendy Cook,Clair View社刊)は、食に関するユニークな著作です。

 著者のウェンディ・クックさんは、シュタイナーの残した食に関する哲学では、「一番大切なのは、おいしく、楽しくいただくこと」というのが、すべてを語る一言だと強調します。いまこの「あたりまえすぎるようなこと」が、危うくなっているように見えます。

 本書は、毎日食べているものが、どこから来るのか(農業と食産業のこと)、私たちの身体にどのように影響しているのか(栄養と健康のこと)、手料理離れや孤食(食をとりまく家族文化)などについてマクロな視点とミクロな視点での分析を同時進行で語る大作(330ページ)です。

 1940年生まれの彼女は、戦中戦後の配給制度と家庭菜園による自給自足という環境の中で育ち、のちにコメディアン、ピーター・クック氏との結婚生活のなかで、60年代から70年代にかけミュージシャンや俳優などに手料理をごちそうしていたという面白い経験をお持ちです。

 2番目のお子さんのアレルギーに悩み、フィンドホーン・コミュニティに滞在中のアメリカ人ジャーナリスト、ポール・ホーケン氏にマクロバイオティックによる食養をすすめられたことがきっかけで、料理と食の世界が拡がったといいます。


TheBiodynamic Food & Cookbook

 ウェンディさんにはじめて出会ったのは、シュタイナースクールの勉強会でした。そこで栄養に関する講義のあと、帰り際に「野菜の切り方を教えて欲しいの…」と声をかけられました。アメリカのマクロバイオティック・コミュニティでエヴェリン久司氏に師事された経験などから、日本人=料理好き=器用という先入観があったのだと思います。「本の出版のために野菜のいろいろな切り方を復習しておきたい…」とのことでした。

 そのとき、日本からきていた母も加わって、即席お料理講座に発展し、あらためて料理が単純な家事作業ではなく、創作の喜びであることをともに確認したのでした。

 たしかに、他のヨーロッパ諸国にくらべても英国の食事情は問題だらけのようです。根底には料理や食に関する関心の低さ、そして習慣をまったく変えようとしない頑固さがあって、栄養に関する基本的な常識がかけている人(とくに労働者階級)が少なくないなどが要因とみられています。ですから彼女のようなひとは、この国では極端な少数派です。

「いつか、日本で醸造の現場をみてみたいわ」と言うウェンディさん。目に見えないものがもつちからについて経験智をもっている日本文化は、伝統的な食材、とくにお酒や味噌、醤油といった醸造産業の土台となっています。

 目に見えないものの意味を積極的に実生活に活かそうとするシュタイナーの世界観が、彼女の目を通して日本の醸造文化にであうとどのような解釈が起こるのか? とおもうと好奇心がわきます。

 ちなみに、今月出版されるウェンディさんの新刊『The biodynamic food & cookbook』に‘Sushi roll’こと「のり巻き」の巻き方を示す「手の役」で参加させていただきました。

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