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2008/09/15

宮迫千鶴さんを偲んで

宮迫さん、再会を期す。

上野 圭一(CAMUNet副代表)

 2008年6月19日夜、宮迫千鶴さんが逝去された。

 宮迫さんとパートナーの画家、谷川晃一さんは1993年から毎年、「伊豆高原アートフェスティバル」を主催しておられた。その初期のころ、フェスティバルの余興にと宮迫さんに呼ばれ、韓国で撮影した心霊治療のビデオを上映しながら話をしたことがあった。

 数年前、たまたま私も伊豆の伊東に転居する始末となり、それ以来、同フェスティバルは初夏の楽しみのひとつになっていた。ところが今春、「体調を崩したので今年はフェスティバルへの参加を控える」との手紙が届いた。手紙には「南庭工房(宮迫さんたちのアトリエ兼ギャラリー)に来られてもお会いできません。悪しからず」とあった。

美しい庭のように老いる
美しい庭のように老いる

 勝気な宮迫さんのことだから、体調のよくないとき人に会いたくないのだなと察して、フェスティバルの時期がきてもお邪魔するのを控えていた。その矢先、青天の霹靂のように訃報が届いた。

 ご父君の死を契機として、宮迫さんが代替医療やスピリチュアリティを探求する内面の旅に生きてきたことは、つとに知られている。

 谷川さんによると、その旅の成果も晩年の数年間に劇的な変化を遂げていたらしい。つまり、膨大な量の読書や瞑想など数々のご自身の体験をつうじて、最大の関心事であった死後の意識存続という究極の問題について、不信や疑惑から確信へと転換するにいたり、大いなる安心の境地を得ていたという。

 その事実を知ったとき、私自身にも、まるで感染のように「大いなる安心」が訪れた。

 その事実を知る経験は、ある種の期待を抱かせてくれる妙薬でもあった。

 肉体が消滅し、あの弾けるようなユーモアや辛辣な皮肉を浴びる至福の時間が失われ、あの明晰なエッセイや絵画作品のつづきを目にすることができなくなるのはとても悲しいことだけれど、遠からず何処かの次元で再会し、旧交を温めることができそうだ、前方にあるのは闇ではなく光なのだという希望を、宮迫さんは遺していってくれたのだ。

 新聞に宮迫さんの死亡記事が掲載された日の翌朝、おなじ新聞がアメリカの絵本作家、ターシャ・テューダーの死を報じた。死亡日時はアメリカ東部時間の6月18日。日本時間の19日だった。日本にいちはやくターシャの仕事ぶりやガーデニング術を紹介してくれた宮迫さんは、大好きなターシャと手を携えて異次元への旅立ちを果たしていた。

「やっぱり、やることが違うよな」その短い記事を読みながら、そうつぶやいた。

 宮迫さん。旅はまだつづいているんでしょうね。また会う日まで。

 

チャクラの見えるサングラス

帯津 良一 (帯津三敬病院名誉院長、CAMUNet副代表)

 宮迫千鶴さん。ありがとうございました。

 永い間、そして最後のときまで、私のことを気にかけてくださいまして。

魔女の森へ
魔女の森へ

 いきなり私ごとで恐縮ですが、私がこうして仕事をしていられることも、多くの皆さんのご理解のおかげです。しかし、当然のことながら、そのご理解にも自ずと温度差というものはございます。

 なかでも最右翼のお一人が、宮迫さん、あなたでした。また、大いなる理解者を失ってしまいました。本当に悲しいことです。

 スピリチュアル・ヒーリングのロンドン研修ツアーでもごいっしょさせていただきました。このツアーは1996年にはじめて5年連続でおこないました。私がホメオパシーの世界に足を踏み入れてしまい、中断したままになってしまいましたが、楽しい思い出でいっぱいです。

 ロンドン市内のヒーリング・グッズの専門店を訪れるのも楽しみのひとつでした。二軒ありました。一軒はトラファルガー広場の近くの本屋さん。もう一軒のほうは地理が定かではありませんが、こちらで「チャクラの見えるサングラス」なるものを私が買ったのを見て、宮迫さん、あなたは笑いころげていましたね。

 最後のときもこの笑いでした。静岡の出張から帰って、あなたの病室を訪れたのは夜の11時頃でした。あなたはもう意識がありませんでしたが、ご主人の谷川さんがやさしい笑みをうかべながら語ってくれました。

 今日ね、突然大きな声で先生の名を呼ぶんですよ。そして、加速して死後の世界へ飛び込め! なんて言うんだから、帯津先生はおかしいねぇと笑ったのですよ。

 宮迫さん、きっとあなたは私の持論を験してみようとして笑ったのですね。

 今度お会いしたとき、その話を聞かせてください。本当ですよ。楽しみにしてますよ!

 また、お会いしましょう。

 

宮迫千鶴さんのご逝去を悼んで…

菅原 はるみ (HAI/ヒューマンアウェアネス研究所)

魂を大切にする生活
魂を大切にする生活

ご主人・谷川さんからの手紙を読んで——

花卯木手紙に不意の胸騒ぎ
青葉冷え友の訃報の息つまる
水無月や望月の夜逝きし友
喪主いはく全生謳歌夏木立
仮の世を駆け抜けゆきしアマリリス

きっと少女時代から——

明眸なる少女の夢や夏の薔薇
宙と空、猫に囲まれ安らげよ
千の鶴千の風なる杜若
天からの啓示を待つべしほととぎす
石楠花や踊りて遊ぼあの世でも

 

絵を描く詩人

若松 英輔 (会社役員、批評家)

 離別と生命の変貌の時節は、人間の恣意の及ばないところで決められる、幾多の賢者がそういった。その真実味は幾度経験を経ても認識が深まることがないかのように、悲しみを伴う。

官能論―祝福としてのセックス
官能論―祝福としてのセックス

 忘れることができない。ある朝、目覚めると同時に、物が落下する音とともに、ガラスが割れ、部屋に破片が散らばった。音で目覚めたわけではない。目を開けると同時の出来事だった。

 落ちたのは、宮迫さんから譲り受けた、額に入った一枚の絵だった。不吉な感じは一切なかったが、不可思議な感覚に包まれたことは今でもよく覚えている。

 小林秀雄は批評家で、井筒俊彦は哲学者だといっても、大きな間違いを冒しているわけではないが、真実には一歩足りない。宮迫千鶴は画家であるといっても、誤りではないが、彼女の全てを語っていることにはならない。

 彼女のある著作に書評を書く機会に恵まれたとき、彼女を「詩人」と呼んだ。それを読んだ彼女が直接、感謝の意を伝えてくれた。宮迫千鶴が、詩を書くという純然たる意味において詩人として出発していることは、記憶していいと思うが、そうした意味だけで彼女を詩人といったわけではない。詩人とは、沈黙するべきは己であって、語るのは天であるというところに人生を定めたひとに他ならない。そうした人物が詩文の変わりに絵を描き始めたとしても、語り者が変わったわけではない。

 宮迫さんが病と闘っていることは知らなかった。あまりに突然な訃報に接したときも、その出来事を了解するには時間を要した。今も十分にそれが出来ているとは思えないが、此岸にいた時とは違う彼女の臨在を感じているのだから、彼女が今、異界の生命を謳歌していることを疑うのは難しい。

 部屋の絵が落下したちょうどそのころ、詩人が病と向き合うために入院した。その事実を知ったのも、もちろん、彼女の死の後だった。

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