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オーストラリア代替医療事情(4)
メルボルンがん支援センター
小川 京子(在メルボルン)
オーストラリアで早くから代替補完医療(最近オーストラリアでは統合医療とも)を取り入れたことで知られているのはイアン・ゴウラー氏です。
![]() 「私のガンは私が治す」 |
ゴウラー氏はもともと獣医で、1975年1月に骨肉腫で右足を切断、11月に再発し、翌年3月に余命2週間との宣告を受けました。その後あらゆる療法を試し、1978年6月、進行がんの兆候なしと診断されました。その後、ゴウラー氏は自分のかけがえのない経験から得たものを他の人とも分かち合いたいという思いから1981年、メルボルンがん患者支援グループを始め、それ以来、がん患者支援、瞑想法やストレス管理法、食事等の指導、講演、執筆、医療専門家の啓蒙活動等、幅広い社会活動を行っていらっしゃいます。
このゴウラー基金(http://www.gawler.org 英語)のがん患者支援とセルフ・ヘルププログラムでは、瞑想法や栄養、積極的な心の持ち方に重きを置き、グループセラピー、アート・セラピー、疼痛コントロールなどをまじえながら、生と死、生きることの意味などを考えていきます。参加者は医者から紹介される人も多く、がん患者にまじって医者自身が勉強のために参加していることもあります。
![]() 「ヤラ・バレーリビングセンター」 |
これまでのレポートでも触れましたが、オーストラリアでは現代医学と代替医療の壁は日本より薄く、催眠療法やレイキなどのコースに通う医者や、大学院の統合医療講座にもどったカイロプラクティック治療師などに実際に会ったり、そういう人の話を聞いたりしたことがあります。これは日本ほどアイデンティティや社会的地位が職業に左右されないことも理由かもしれません。つまり全般に「プライド」や「見得」に日本ほどとらわれないでよいお国がらであることも大きいのではないでしょうか。
ただし、ゴウラー氏がこうした活動を始められた20年前と今では、格段に社会の代替医療に対する受容度が高くなってきてはいるそうです。ゴウラー氏が数年前に日本からもどられた時、日本は15年前のオーストラリアのようだとおっしゃっていたそうですが、なんでもペースの速い日本ですからその変化も速いのではないでしょうか。
前号のニュースレター(CAMUNet会員誌「CAMUNet correspondence」vol.16。02年11月)で日本のがんの代替療法の実態調査結果を興味深く拝見しましたが、私の見る限り、オーストラリアでは特定の健康食品が日本ほど話題にならない点が大きく違っているように思いました。こちらではそれよりセルフヘルプの考え方の順位が高いのではないでしょうか。
![]() ![]() 「ガン患者とその家族や支援者のための10日間の合宿ワークショップ」 |
実態調査の中で代替療法を受けた理由として「友人からの勧めで仕方なく」というのがありましたが、ゴウラー氏は「自分で最良と納得して決断し、やると決めたら断固として実行すること」と言います。医者と患者の関係では、「自分の希望や志向をはっきりと正確に、感情的にならずに医者に伝える」「診察にあたっては配偶者といっしょに行ったり、メモを取ったり、テープに録音したりして、正確な情報を得る。また、医者に対する情報と教育のために、自分がどんな自助努力をしているのか、話す」「もし満足できなければ医者を替える準備をしておく。このことで傷つく人はおらず、むしろ誰にも楽になるはず」
また、死と臨終に関しては、「万一の場合のことをきちんと話し合う。再婚の問題なども避けないで、たとえ回復できなくても、心安らかに旅立てる準備をしておく。まわりもそうさせてあげる」
——このように、療法そのものだけでなく、広い範囲で人間の生き死にを暖かく見ていく姿勢には心打たれるものがあります。
ゴウラー氏自身の回復の過程については、瞑想法で知られるエインズリー・ミアーズ医師がこう記録しています。
〈この若者は壮絶なまでの生への意志を持ち、通常の医療から代替医療まで、考えられる限りあらゆる 療法を模索し続けた。鍼、マッサージ、フィリピンの心霊療法、手のひら療法、それにインドのアシュラムでのヨガ等である。この患者は短期間放射線療法とキモセラピーを受診したが、その後継続を拒否、ドイツ人医師マックス・ゲルソンによる食事療法と浣腸療法に固執した。ゲルソンはこの種の療法により1940年代のアメリカで悪名を得た医者である。こうした治療法に加えて、患者は徹底的な瞑想法を続けた。
その他に2つの要素が重要と思われる。ひとつは現在は妻となった当時の恋人からの、実に献身的な援助と支えである。この女性は、患者の心情と患者が必要とするものを心底理解し、(中略)惜しみなく時間を割いた。いまひとつは患者自身の気持ちの持ち方である。この患者は他のどの患者にも、また、それまで私なりに経験してきた東洋思想においてさ えも見たことのないような平穏な心の状態に達していた。
なぜこのように癌の転移を後退させることができたのか、という問に、この患者はいつもこう答える。
「人生とは本当に自分自身のもの、自分が自分の命をどのように生きていくかということそのものだと思うのです」〉(原文英語)
※写真はいずれもイアン・ゴウラー氏の許可を得てhttp://www.gawler.orgより転載
おがわ・きょうこ Ogawa Kyoko
1993年よりオーストラリア、メルボルン在住。人間が生きていくことについての断片的な知識や知恵のあれこれが、ゆっくりとひとつにつながっていくのを今楽しんでいるところ。
◆小川さんがかかわっているサイト
Japan World Music http://www.japanworldmusic.com/jindex.htm
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