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What's CAM?

 

オーストラリア代替医療事情(8)
オーストラリアの医療システム

小川 京子(現・台湾 新竹在住)

1. GP、public、privateという医療制度

 オーストラリアの医療には今でも新しい発見があってなかなかおもしろいです。こちらでは病気になるとまず予約をとってGP (General Practitioner 一般開業医)にかかります。日本でいうとかかりつけの医者に相当し、内科、外科、小児科、婦人科などすべてをカバーしたクリニックです。薬が必要となるとprescription(処方箋)を書いてくれるので薬局に行って薬を購入します。クリニックで薬をもらうことはありません。もちろん市販の薬もありますが、全般に日本より薬が管理されているような印象を受けます。私の経験ではそれなりにつらい症状で医師を訪れても、すぐに薬を処方するようなことはせず、ヨガや瞑想をするように、りんごを1日3個食べるように、薄めのペパーミントティーを就寝前に飲むように、1日30分歩くように、はたまたこういう時は何をしてもむだ、自然に回復するのを待つように、というような指示を受け、異文化を味わったことがあります。自らの力で健康を保つようにという姿勢が基本にあるのかもしれません。

写真
Health & Wellbeing Medical Centre
の待合室

 GPが専門的な検査や診断が必要と判断したらspecialistと呼ばれる専門医に紹介状を書いてくれます。レントゲンや超音波など複数の検査を受ける場合は日本のようにひとつの病院で済まないことが多いため、それぞれへの紹介状を持っていくつかの機関を回らなくてはならないのが不便です。その結果は患者本人ではなく紹介してくれたGPに報告されるので、患者はGPの所へ結果を聞きに行きます。GPはもどってきた結果を総合的に判断して治療方針を立てていくわけですが、そこで他の検査が必要となると患者はまた別のspecialistへの紹介状を持ってでかけていくことになります。

 さて、ここで選択が二つあります。publicと呼ばれる公的機関と privateと呼ばれる私立の機関です。私は2度ほどちょっとした手術をしたのですが、最初は公立にしました。命に関わるような症状でなかったため、この時は半年ほど待たされて、ある日病院から手術日が決まったという手紙を受け取りました。この日は自分では選べません。でも、さすがに公立、これは全額保険でカバーされました。

 2度目も緊急ではなかったのですが、また長く待つのはいやだったので私立にしてみました。GPから紹介されたspecialistのクリニックで診察を受け、やはり手術ということになりました。手術を担当するのはこのspecialistですが、最初に診察を受けたクリニックでは手術をせず、1週間に2日、2か所の私立病院に行って手術をしているということでした。どちらの病院でも同じ手術ができるが値段が違うので、安いほうに来たらどうかと薦めてくれました。実は運悪くこのspecialistが5週間の休暇に入る直前だったため、せっかく私立を選んだのに結局かなり待たなくてはならなかったのですが、ともかく予定の日に無事手術が終わり、私が麻酔から醒めた時はこの医師はもう病院にはいませんでした。出張手術なので、クリニックにもどったということでした。

 手術費の詳細を見ると、手術担当医、麻酔医、手術助手、nurse(看護婦・士)、入院費(病院の施設を使用すると言うことで日帰りでも入院と言います)など、細かく明細が出ていて、しかも支払い先は別々です。病院の常勤スタッフの他にその手術のために出張してくる担当者でグループが構成されるといった感じです。

 日本だったら2度とも入院した思いますが、私はどちらも日帰りでした。午前中に手術をして、昼ごろ目覚めるとnurseが簡単に手術の説明や今後の指示をしてくれ、昼食にサンドイッチとジュースをいただいて帰宅。1週間後にどこのGPでもいいので(これも不思議)抜糸してもらいに行き、後はいつものGPに行ってspecialistから送られてきた写真やレポートの説明を受けます。specialistに会ったのは事前の検査、手術、手術後のチェックと計3回くらいだったと思います。

 このように私の場合、Specialistとの関係は事務的でしたが、GPが患者をずっと通して見ているので、患者を全体的に把握するという点ではよいシステムだろうと思います。また、医師どうしが電話やファックスで患者のレポートを気軽に報告しあったり、情報公開やネットワークがしっかりしているような気もします。

 その他に日本と違うのはGPもSpecialistも白衣でなく普通の服で、nurseがおらず一人で診察を行う点、また他の分野同様、医師にも女性の割合が高い点だろうと思います。

 

2. オーストラリアの統合クリニック

 まだ医療費の安い日本では逆に自分の体を自分で守ろうとする姿勢を身につけるのはなかなか難しいかもしれない。お金を払ってだれかに責任をゆだねてしまったほうが楽だからだ。

 一方、オーストラリアでは医療が統合される方向へ向かっていると言えよう。一方はすでに医学部で学んだ医師が代替補完医療について学んで応用範囲を広げていく方向、もう一方は代替補完医療のpractitioner(治療士)が大学にもどってintegrative medicine(統合医療)などを勉強し専門的知識をより深めていく方向である。

 知り合いの勤めるクリニックHealth & Wellbeing Medical Centreはなかなかおもしろい。パンフレットと聞き書きからまとめてみる。

 このクリニックは統合的なやり方で患者を全的に診ていきます。肉体的、心理的、精神的、霊的な側面から家族の生活全体をサポートします。このクリニックでは伝統的医療と補完医療の両方をいちばんよい形で用います。森と庭に囲まれた和みの空間で診察の前後に憩いの時間を過ごしてください。理念 私たちは健康とは無病という状態を越えたものだと考えています。皆さんの健康のすべての側面を考慮し、ひとりひとりの問題点とご提案する処法について、できるだけ明確でわかりやすい説明をするよう心がけています。自分自身の治療方針に積極的に関わっていってください。私たちはそれを通してみなさんが幸福になるようお手伝いをしていきたいのです。 誰にでも一様に効くというような治療法はありません。いろいろな療法を使って成功の可能性を高めていくために、私達は一人一人の方にあったやり方をさぐっていきます。みなさんが同意できないものを押しつけることはありません。そのためにもどうぞご意見を聞かせてください。

 11年前にこのクリニックを設立したのは2人の女医で、自分たち自身がアレルギーや薬物への過敏反応に苦しんだことがきっかけだったそうである。

 一般的にオーストラリアのクリニックの外見は普通の家とあまり変わらないことが多い。だが、入り口を入ると受付があり、その奥にそれぞれの医師/治療士の診療室がある。受付は通常ひとつだが、それぞれの医師に別個の事務員がついている所もあれば、1人から数人の事務員がすべての来訪者の対応をしている所もある。

 Health & Wellbeing Medical Centreには3人の医師と3人のpractitionerがそれぞれ独立して診療室を構えており、患者自身が選んだ人から診察を受ける。診療範囲としてあがっているのは一般医療、ホメオパシー、カウンセリング、日本の鍼、婦人科、女性の健康、男性の健康、小児医療、薬草、自然ホルモン療法、催眠療法、ストレスの軽減、メディテーション・クラス、マッサージ、リラクシゼーション・マッサージ、妊婦マッサージ、レイキなど。vega machineペンジュラム(注)による診断も行われているそうだ。

 診療は自費。医師/治療士にもよるが初回60分、後は30分で160ドル程度。保険によっては半額近くもどってくることもあるが、それでも相当高額である。

 余談だが、クリニックの診療室にかかっている名札を見ておもしろいことがある。GPの場合はすべてDr.だが、specialistになるとMr. となっていることがある。specialistとは放射線技師のような技術職のことをさすのか、と思っていたら、世にあまりにもDr.が多いため、逆に自分をDr.と差別化するためにspecialistになるとMr.に名乗り直す医師が多いのだという。

 もうひとつ、この国ではファーストネームで呼び合うのが一般的だ。高校までは教師もたとえば"Mrs Hayes"と呼ばれるが、大学になると"Hi, Jenny"——医師もこうして名前で呼ばれる。実はこんなところにも患者が医師と対等の立場で発言しやすい理由があるのかもしれない。

 

注:vega machine

ベガテスト。ホメオパシー抽出液を回路内に配置し、一定の鍼灸点における微妙な生体反応の変化を電気的に測定する。アレルギー、感染、毒素、生体エネルギーの不均衡などが確認でき、薬の有効性を事前に診断することができるとされる。

ペンジュラム

振り子占いとも。ひもの先にさがったおもりの動きで生体反応を測定する。Oリングやダウジングに共通するか?

おがわ・きょうこ  Ogawa Kyoko

本業は日本語教育。1993年よりオーストラリア、メルボルンに在住していたが、この6月より台湾。日本でいえば産業経済省に当たる機関の国際貿易訓練センターで大卒のビジネスマンを対象に日本語を教えている。この連載終了後は、台湾からのレポートとなる予定。

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