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オーストラリア代替医療事情(10)
日豪医療事情の違い

小川 京子(現・台湾 新竹在住)

 外務省の統計によると、オーストラリアの日本人在留届提出者は約4万7千人だそうです。それに在留届未提出者とオーストラリア国籍取得者を加えるとかなりの数になるのではないかと思います。
 オーストラリアでは大きい都市には必ず日本語の月刊誌や情報誌などがありますが、特に最近「健康」「癒し」などの特集が組まれるようになりました。

 メルボルンではマッサージ、アロマセラピー、オーラソーマなど、こちらに来てから学校に通って資格を取られた人のほか、日本で身につけた技術を持って沖ヨガ、指圧、整体などに日本人がいます。中にはオーストラリアに移民するためにわざわざビザの取りやすい分野の資格を日本で取って来られた人、日本だけでなくアメリカやイギリスで治療士として仕事をしていた人もいます。

 話を聞いていると、日本人のお客さんも多いそうです。やはりくつろぐときは日本語で、ということもあるのでしょうか。

 最近日本でも人気のあるマッサージやアロマセラピーのコースは日本人学生も増えてきているようです。こちらで資格を取るためにはもちろん英語が必要で、特にほとんどの分野で要求される解剖学の勉強は特に大変なようです。しかし、資格とまではいかなくても基礎的なことを学びたい人のためのコースもたくさんあります。オーストラリアでは、生涯学習などと構えなくても、社会人が勉強を続けるのが当たり前なので、仕事のある人、主婦、遠隔地に住んでいて学校に通えない人などのために通信教育、短期集中コースなど、多様な選択肢があります。

 メルボルンの医療・福祉・ビューティーセラピー等を視察に見えた日本の女性グループと現地の日本人女性関係者の交流会に参加する機会がありました。日本側は、ウィミンズ・ウェルネス銀座クリニックの院長で産婦人科医の対馬ルリ子医師と、フィトセラピストの吉川千明さんの企画で集まった女性医師、ビューティセラピスト、医業経営コンサルタント、医学生などからなる24名の女性。メルボルン側は、現地のコーディネーションを行ったAsia Accessの招待を受けた日本人女性精神科医、現地の日本語新聞記者、旅行会社関係者など約10名。

 対馬ルリ子医師は、「Orchid Club」(http://www.orchid-club.gr.jp/)という、女性の体やライフスタイル全般をサポートしようとする女性のヘルスケア専門家グループの発起人でもあります。

 以前もご紹介しましたが、オーストラリアでは病気になると、まずGP(General Practitioner:一般開業医)にかかります。そこで必要であればspecialistと呼ばれる専門医に紹介状を書いてもらい、それを持って各専門医を回ります。その結果は患者本人ではなく、もとのGPに報告されるので、患者はGPの所へ結果を聞きに行きます。

——こうしてGPは、常に患者の状態を総合的に見ながら治療方針を立てていくことになるのですが、対馬医師によると、日本ではそうしたシステムがないため、"ワークシェアリング"の形を取って、それに対応していこうとしているということでした。

 なるほど、日本にいた時はかかった医師同士がカルテを交換しあうということはなく、医院をかえると同じような検査をまた繰り返さなくてはならなかったような気がします。

 一方、オーストラリアでは医師同士が知り合いであることも多く、ファックスなどでわりと気軽にカルテを交換し合っているようです。

 日本の話を聞いて印象的だったのは、「女性」をキーワードにからだやこころ、ライフスタイル全般を支援していこうという姿勢でした。

 たとえば人に相談しにくい痔の診断を受けやすくするために、医師もスタッフも患者も全員女性のレディスデイを設けているという医院の話などは、なるほど、と思いました。こちらではあまりそういう動きはないようです。

 オーストラリアは移民国家なので、女性・男性というよりも、母語で診察を受けられるということのほうが切実な問題です。これは社会構造の違いからくるものでしょう。

 こちらで知り合った年配の日本人永住者のがん患者は、日本にいる兄弟のところに身を寄せて、肩身のせまい思いをしながら日本語で治療を受けたほうがよいのか、オーストラリアの自然の中の自分の家でのびのびと、しかし不自由な英語と格闘しながらこちらで治療を受けるべきか、迷っているとのことでした。

 また、日本の医療福祉関係の大学を訪れる機会があったのですが、その大学では事務職員も全員白衣を着ていました。前にも書きましたが、オーストラリアでは診察室でも普通の服を着た医師と患者がファーストネームで呼び合います。医療側と患者側の力関係はこうしたことにも知らず知らずのうちに影響されるところがあるのではないでしょうか。

 日本の参加者にオーストラリアの印象を聞くと、日本では医療の中に入ってこられないアロマセラピーが医療活動の一環として総合的に取り入れられていたり、福祉の現場で個人に焦点を当てたケアがなされている点など、参考になる点が多いということでした。

おがわ・きょうこ  Ogawa Kyoko

11年3ヶ月のオーストラリア在住を経て、現在台湾新竹在住。訳書にイアン・ゴウラー著『私のガンは私が治す』(春秋社)

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