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What's CAM?

 

<spirituality>ということばをめぐって
vol.2 新門さんとアインシュタインと。

帯津 良一

 WHO(国際保健機関)の健康の定義に〈霊性〉が入ることは、いまでは周知のことになりましたが、私がはじめて知ったのは1998年の秋のことでした。このときの驚きといささかの興奮はいまでもよく憶えています。

納棺夫日記
『納棺夫日記』

青木新門著

 『納棺夫日記』の著者の青木新門さんは上京するとかならず新宿の「火の子」(ひのこ)という居酒屋ふうの店に現れます。久しぶりに新門さんとこの店で酒を酌み交わすことになったときのことです。顔を合わせるなり、「先生、これを読みましたか」と内ポケットからふたつに折った雑誌のコピーを差し出します。見ると、法蔵館発行の『仏教』という雑誌の最新号(45号。1998・10)で、題して「『霊性』ととりくみはじめたWHO」とあります。なんだろうと怪訝に思いながら読みはじめ、読んで合点しました。さすがはWHO、人材がいるな——というのが最初の思いでした。

 少なくとも、当時の医学の世界では「霊性」は禁句でした。医学のなかに蔓延している“科学教”が霊性を怕がっていたのでしょう。これは日本だけのことかと思っていたら、アンドルー・ワイル博士も『身心自在〜癒す心、治る力 実践編』(上野圭一訳/角川書店)のなかで、人間は身体性・精神性・霊性という三つの要素からなっているのに、「現代医学はもっぱら身体性だけに注意を向け、精神性についてはリップサービスこそするものの、真剣にとりあげようとしていない。そして霊性についてはまったく無視している」と書いていますから、世界的な傾向だったのでしょう。私自身はとうの昔から霊性を医療の中心にとらえていました。うっかり口にすると誤解を招くし、時と場合によっては爪弾きにされると思って黙っていただけなのです。

 ホリスティック医学は〈場〉の医学だといつも言ってきました。この世の中はいくつもの階層から成り、その各階層に〈場〉が存在し、各階層の場はひとつ下の階層の場を“超えて含み”ながら全体として秩序のとれた場を形成しています。階層とは素粒子、原子、分子、組織、臓器、人間、地域社会、自然環境、地球、宇宙、虚空……といった階層です。人間は臓器のレベルの場を超えて含んで人間の〈場〉を形成しています。

 私たちの体内にある臓器のレベルの場のポテンシャルエネルギーが〈生命〉であり〈ソウル soul〉であって、人間のレベルの場のポテンシャルエネルギーが〈いのち〉であり、〈スピリット spirit〉と考えてよいのではないでしょうか。つまり、私たちを包む共通のいのち、あるいはスピリットが私たちの体内に宿ったものが生命であり、ソウルなのでしょう。そして生命もいのちも、ソウルもスピリットも、すなわち霊性のことなのです。
 だから、「霊性とは場のポテンシャルエネルギーである」とずっと考えていたのです。
 実にすっきりとしたものです。なんの迷いもありませんでした。

 空間があって場があれば、かならずそこには霊性が存在するのです。なにもおどろおどろしく考えることはありません。ことさら宗教との関係を云々する必要もありません。どんな立場であろうと、人間である以上、霊性について考えることはごく自然なことなのですから。宗教というのは、虚空の場について、あるすぐれた人がこれを翻訳したものを是とする人々が学び、信じているものであって、翻訳者の数だけいろいろな宗教が存在するのは当然のことです。私のように原書のまま読もうとするものにとっては翻訳書は必要なく、したがって宗教というものをことさら意識することもありません。

 天才アインシュタインは、かねて宇宙的宗教(コズミック・レリジョン Cosmic Religion)というものを唱えていたそうです。彼も宇宙の真理を原書で読もうとしていたのでしょう。このことを知ったとき、世紀の天才アインシュタインに言いようもない親近感をおぼえたものです。
さらに彼は、“宇宙的人間”になることを他人(ひと)にすすめていました。宇宙的人間とは、いつしか虚空の霊性と一体となるために、わが内なる霊性を高めつづけている人のことです。そうです。私がいつも言っている“気功的人間”のことなのです。
 ますますアインシュタインが好きになってきました。

‘CAMUNet correspondence’ vol.2(July.2000)より

おびつ・りょういち Ryouichi Obitsu
1936年埼玉県生まれ。東京大学医学部卒。医学博士。帯津三敬病院名誉院長。日本ホリスティック医学協会会長、CAMUNet副代表。西洋医学に中国医学や代替療法などを組み合わせたホリスティックながん治療に取り組んでいる。著書に『いのちの勉強 「いつでも死ねる」生き方のすすめ』『あきらめないガン治療 ホリスティック医療の実践』など多数。

※ book club特集「帯津良一 自選10books」

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