What's CAM?
トータルライフケア・イン・台湾(2)
中医
小川京子(台湾・新竹在住)
この南国には冬などないだろうと大きな誤解をしてオーストラリアからやって来た私ですが、ここ台湾にも冬はありました。しかし、住宅にも店にも暖房設備はなく、それどころかバスや電車は曇りどめや除湿のため冬でも冷房がかかっていることさえあります。人々がもともと寒さに慣れていないせいか、ちょっと気温が下がると風邪を引く人が続出です。
![]() 中医の入り口 |
オーストラリアでは医療費も高く、医院との付き合い方の習慣も違うため、風邪「ぐらい」でクリニックにかかる人はほとんどいなかったのですが、台湾の人たちは医院慣れしています。ちょっと寒くなると近所の耳鼻科は道にまで患者があふれます。それには、SARSなどへの配慮もありますし、保険診療が行き届いていることもあげられるでしょう。
こちらには日本と同じく総合病院と小さな医院、それに「中医」と呼ばれる漢方医院があります。医院の数が驚くほど多いと思うのは広い国から移ってきたからでしょうか。町では一ブロックに複数の医院が軒を連ねていることもあります。特徴的なのは前回ご報告した歯科や眼科の他、皮膚科が目立つこと。皮膚病というよりも、美肌など美容への関心が深いことがその背後にあるような気がします。
さて、医療費ですが、一般の医院や総合病院など西洋医療機関の診察の基本料金は保険証があれば1回150元。物価の比較は基準を何にするかが難しいのですが、食堂のラーメンの3杯分程度。ちなみに一般的な大卒の初任給は税込みで2万5000元から2万8000元程度と言います。
![]() 中医の薬局 |
前回、家庭内での高齢者ケアが一般的な台湾では、介護のための住み込みの外国人お手伝いさんが増えていることをお話ししましたが、政府のビザ発給としてこの大卒初任給程度の給与を保証することが条件になっているそうです。
一方の「中医」は1回100元で、診察後、症状に合わせて温湿布、その後医師による鍼や師父と呼ばれる治療士による推拿やカッッピングなど、場合によってはその複数の組み合わせの治療を受けます。薬が処方される場合は5日から1週間分で20元から40元程度の加算となります。医師の診察なしで後者の治療だけを受けることもでき、その場合は診療費も安くなります。
参考までに私の月々の健康保険支払額は830元です。私はせっかくの健康保険を利用して、半ば趣味のように中医通いをしています。
最初、脈を診ただけで生理や睡眠状態のほか、仕事で少々落ち込んでいた日にはそのことまで言い当てられたときは、これが話に聞く東洋の智慧というものかと驚きました。
![]() カッピング(吸い玉療法) |
一般の人にも古くからの伝統医療は生活の常識となっていて、どんな人でも食養生から風水まで、それなりの知識を持っているようです。オーストラリア時代、オーストラリア生まれのpractitioner と呼ばれる自然療法師と話していたとき、日本の食生活や子供のころ祖母がしてくれた「癒気」のことに触れたら、目を輝かせて「もっと聞かせてほしい」と言われたことがありました。「癒気」は多少特殊だとしても、日本人の私に日常的なことが彼女にとっては珍しかったように、私がこんなふうに感心していることも台湾人にとっては当たり前のことなのかもしれません。
そんなわけで、スーパーでも、「四物湯」「四物湯」などのいろいろな種類の薬膳のセットが真空パックで手軽に売られています。薬膳というだけあって、漢方薬局でも無造作に紙にくるんだ大きな薬膳セットが積まれており、中医の受付では目の前で生薬を配合してくれます。クコや干山芋などの材料は乾物屋で手に入れられ、ここでもできあいの薬膳セットを売っています。私もときどき利用しますが、鶏肉などといっしょに煮込むだけでいかにも体によさそうなスープのできあがりです。好き嫌いはあるでしょうが、日本人には、調理後、特に部屋が漢方くさくて気になるということもないと思います。
おがわ・きょうこ Ogawa Kyoko
本業は日本語教育。11年余のオーストラリア・メルボルン暮らしを経て、2004年6月より台湾・新竹在住。日本でいえば産業経済省に当たる機関の国際貿易訓練センターで大卒のビジネスマンを対象に日本語を教えている。訳書にイアン・ゴウラー著『私のガンは私が治す』(春秋社)。
Back Number
代替医療という世界
<spirituality>ということばをめぐって
naturopathy
「ナチュロパシー」の世界
From Taiwan
トータルライフケア・イン・台湾
CAM in Australia
オーストラリア代替医療事情


